主訴は流産せずに産みたいということである。
タイミングなどでの自然妊娠が2回、そして体外受精での妊娠も2回あるものの 心拍が見えずに流産が2回、化学流産が2回と妊娠が継続できていない。
中学時代にはバセドー病になり、服薬で落ち着いている。
もともと少し腎気に不安定さがあったのではないかと思われる。
問診上はとりたてて大きな違和感のある項目はない。
しかしながら、体表観察をしてみると、変化が大きいものが多い。
とくに、舌の明瞭な淡白舌、右に歪舌 やや膩苔、歯痕のきつさ、舌裏の怒脹は 目を引く。歯痕がきつく列缺のこそげもあり、全身の気虚が伺える中、上背部には、風門の発汗陥凹、大椎の冷えなど、風邪の内陥の可能性がうかがわれ、舌の明瞭な淡白舌とあわせ陽気の建ち昇りの悪さが伺える。
また、切診で右の外関、後谿、内関、右の肝の相火、右の霊道のこそげの大きさなど、右の歪舌とあわせ、右への気の偏在がみてとれる。
全体としての気虚気味のなか、上焦での風邪の内陥による気の偏在が問診上にはあまりでていないのに、切診状では明瞭なのである。
その上、やや膩苔気味であり、内湿をためがちな脾気の状態が伺える。
これら上焦、中焦の問題を支える下焦の腎気は、もともとの不安定さ、夜勤のある仕事などでより不安定ぎみであったと思われ、切診でも外関の陥凹、湧泉復溜の冷え、腎兪の陥凹など明瞭であり、上焦中焦への支えやバックアップが不足していたのではないかと思われる。
35才の流産後から生理の量が減り期間も短くなっている。 流産により腎気がおち子宮への養いがより減ってしまった可能性が伺える。
腎気の弱さがあるため、子宮を温煦し下支えする力が弱い。陽気の建ち昇りがわるいことから、衝任脈が健やかに建ち上れず子宮への温養が不足することが伺える。この腎気の弱さと衝任脈の温養不足は、風邪の内陥による腎気への負担、内湿をためがちな脾気が加速させている可能性もあろう。
過去の妊娠が心拍確認後の流産2回、化学流産が2回と、子宮を中心とする下焦の伸びやかな充実が望まれる。
弁証: 腎虚を中心とした気虚 風邪の内陥 子宮への温養不足
論治: 益気補腎 疎風散寒 温養子宮
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