治療指針:生活提言


頭のふらつき平衡感覚の違和感弁証論治
病因病理:弁証論治



病因病理



特に大きな不調もなく、二度の出産後も調子を崩すことなく過ごされてきたこと や、外因の影響を受けにくいことなどから、持って生まれた腎の器はしっかりし ていると思われる。

しかし、二度の出産とも母乳が出なかったこと、閉経後に便秘を感じ始めるよう になったことなどから、本来は脾気の弱さを持っている人であり、丈夫な腎気の バックアップがあったから、それまで脾気は健やかに働けていたのではと思われ る。出産によって一時期腎気が落ちたとき、閉経によってそろそろ年齢的に腎気 が落ちてきたときに、脾気の弱さが表にあらわれたのではと推測する。

68歳頃から頭のふらつきや平衡感覚に違和感を感じるようになった。しっかり していた腎の器も脆さが出るようになり、肝の根を支えることが難しくなってき たのだと考えられる。元来が丈夫な人なので、これまでと同じように動こうとし て肝気を張るため肝鬱がきつくなり、内風が生じたのだと思われる。肝鬱は腎気 に負担をかけるため、さらに腎気は落ち、また肝鬱がきつくなるという悪循環が 始まることとなった。

やがて、配偶者の具合が悪くなり心身共に疲労を重ね、腎気への負担は増し、腎 虚肝鬱はさらに進んでいった。







こうして、腎気を主体とした全身の気虚となっていく。78~79歳頃から目の 疲れを感じ始めたことからも腎虚が進んだことが伺える。また、この頃から起こ り始めた眼瞼下垂のような感じ、瞼の重みなどは、気虚により瞼に生命力が集ま りにくくなったために起きていると思われる。瞼は脾に属するが、腎虚により潜 在的に持っている脾気の弱さが表にあらわれたのではと推測する。気虚なので目 が覚めて陽気が立つまでに時間がかかる。朝に瞼の重みを感じやすいのは、朝は 瞼に生命力を集めづらいためと考えられる。

また、右足の裏に違和感を感じ始めたのも、気虚により気滞が生じやすくなった ためと考えられる。

切診において、左足の冷えがきつく前脛骨筋がこわばって足三里に反応がないが、 右足は足三里に陥凹が出ている。このことから考えると、右足の方が生命力があ り、反応を出しやすいのではと考えられる。右足だけに気滞を起こし違和感を感 じているのは、左右で生命力の差があるのではと推測する。

82歳6月に配偶者が亡くなる。その前後は看病や事後処理などで心身の疲労は さらに増大し、腎虚肝鬱の悪循環に拍車をかけた。このため、内風の起きる頻度 が増し、抗不安薬を服用するようになった。







83歳1月には、いきなり足が冷えるようになったり、膀胱炎や膣炎、痔の痛み など下焦の問題が起きていることから、かなり腎気が落ちてしまったことが伺え る。

腎気が落ちるということは、気持ちに余裕がなくなり、許容範囲が狭くなるとい うことである。このため、不安を感じやすくなる。不安を感じ緊張するので肝気 を張ることになり、内風が起きてしまうのでふらつきが出る。抗不安薬で不安を 緩め緊張を解くと肝気が緩むので、内風も落ち着きふらつきは無くなる。しかし、 肝気を張ることによって損なわれた腎気が養われるわけではないので、抗不安薬 が切れると、また緊張が始まり、ついには抗不安薬を手放せなくなってしまった のだが、やがて今度は抗不安薬が効かなくなってしまった。腎気落ちがきつくな り、内風が治まらなくなってしまったのではと推測する。腎気をひどく落とした ため、気虚もさらに進み、生命力がいきわたりづらくなり手足の震えが生じてき たと考えられる。

抗不安薬をやめられないことがかえって不安になり、不安が引き起こす肝鬱によ り耳鳴りが生じたり肝気が横逆し食欲が落ちたりした。腎虚は肝腎同源である肝 陰の不足となり、肝陽をおさめることができず不眠となったり悪夢を見たりした。 腎虚による虚熱が心を突き、発汗や不整脈が起きたりした。

現在は、抗不安薬もだいぶ減らせるようになり、不眠はなくなった。

年齢的にある程度腎の器が脆くなるのは仕方がないが、膀胱の違和感(たまって も感じない)や、残尿感、尿の切れが悪い、翌日に疲れが残ることなどからも、 まだ腎の器の不安定さが感じられる。




弁証論治



弁証:腎虚を主体とした気虚 肝鬱による内風

論治:益気補腎 最小限の理気







主訴:問診

時系列の問診

切診

五臓の弁別

病因病理:弁証論治

治療指針:生活提言











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