月経総論





月経とは、女性が一定の年齢に達すると周期的に子宮から出血するこ とです。その周期の長さが月が満ちて欠け、また満ちるまでの長さに近い ので、月経と名づけられています。また別に、月事・月候・月水・経候・ 信水・月汛(げつじん)等とも呼ばれています。《本草綱目・人部》<婦人の 月水>という条項には、『女子は陰の類となる、血を主とする。その血は 上は太陰〔訳注:空にかかる月〕に応じ、下は海潮に応ずる。月には満ち 欠けがあり、潮には満干がある。月事は一月に一回おこり、これと符合す る。そのため、月水・月信・月経と言われているのである。』とあります。







正常な月経は、女性が生熟したことを示す徴候の一つであり、女性が妊娠 することができるようになったことを示すものです。また月経は、その女 性の健康状態を示す指標の一つにもなっています。《景岳全書・婦人規》 には、『月経が普通にあるということは、常態である。もし月経が不順で、 その常態から逸脱していれば、さまざまな病が現われてくる』と述べられ ています。

月経が周期的規律的に起こるということはどういうことかというと、月経 が一定の周期に・一定の期間・一定の量で・一定の質で・一定の色でおこ るということであり、また、一定の時期に初潮が始まり、一定の時期に閉 経となるということです。






1、月経と年齢




初潮



初めての月経が女性におこることを「初潮」といいます。初潮の年齢は、 種族・環境・気候・栄養状態・体質などの要素によって異なっています。 《内経》には、十四才で初潮がおこると記載されていますが、これは中国 国内の平均年齢と基本的に一致します。また、十一才以前に初潮がくるも のは早すぎると考えるべきでしょうし、十七才以降まで始まらないものは 遅すぎると考えるべきでしょう。初潮がくるのが早すぎても遅すぎても、 そこには何らかの問題が隠されているのではないかと疑ってみなければな りません。




周期



月経がおこる周期のことを「月経周期」と呼びます。月経が始まった第一 日目から次の月経が始まる日までを一周期とします。初潮がおこってから 一定の期間(一年前後)は、身体の発育がまだ不完全なので、月経の周期 も安定しません。身体が発育し成熟していくに従って、月経が規則的にお こるようになります。一般に正常な月経周期は一月に一回(二十八日前後) です。妊娠や授乳の時期以外はだいたいにおいてこのような周期をとりま す。病気でもないのに二ヶ月に一回しか月経がこないものを「併月」と呼 び、三ヶ月に一回しか月経がこないものを「居経」と呼び、一年に一回し か月経がないものを「避年」と呼び、生涯を通じて月経がこないにもかか わらず妊娠することはできるものを「暗経」と呼び、妊娠しても月経がな くならずまた胎児にも異常がないものを「激経」「盛胎」「垢胎」と呼ん でいます。このような異常な月経形態を取るものであっても、一般的には 個人的な特殊性であると把え、病気であるとは考えません。一般には、正 常な月経周期で、おおむね三十数年間にわたって月経があります。これは つまり、女性が妊娠できる期間が三十数年であるということを示していま す。




期間



月経が始まってから血液は乾ききれいになるまでの期間を「経期」といい ます。月経は一般的に三日から五日続きますが、六日から七日にわたるも のもあります。月経の期間が異常に短かったり(三日以内)異常に長い場 合は、問題が隠されていると考えます。




絶経[閉経]



一定の年齢となって生理的に月経がなくなることを「絶経」といいます。 一般的には四十五才から五十五才の間に月経がなくなりますが、あまりに も早く終わったり遅すぎたりする場合はその原因を詳しく調査する必要が あります。






2、月経の量




月経には一定の量があります。おおむね一回の月経で総量が50CC~80 CCになります。月経が始まった日は量が少なく、その後徐々に増加して、 二日目はもっとも多くなって、それ以降は徐々に減少してきれいになって いきます。もし月経の量が極端に増えたり減ったりした場合は、病が隠さ れているのではないかと疑う必要があります。






3、経血の色と質




正常な経血の色は血の色です。月経が始まったばかりの時期にはやや薄い 色ですが、徐々に赤みがまし、終わるころには暗赤紫色になります。正常 な経血は、薄くも粘ることもなく、塊がなく、色や艶も明るくはっきりし ており、異常な感じがありません。

気候や住む場所などの生活環境が急に変化すると、月経の期間や量にも異 常が見られることがありますが、身体がその状況に適応していくに従って、 月経の状態も一般的には自然に戻ってきます。









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