月経周期の検討





月経には、周期性と規則性があるということはすでによく知られ ていることです。しかし、なぜこのような生理現象をとるのかというこ とに関して、さまざまな解釈が古今内外でなされていますが、いまだに 明快な認識にはいたっていません。中医婦科学では、臓腑・気血・経絡 の生理的な機能に基づいて月経がおこる理由を解釈し、それにそって月 経の問題について臨床的に弁証論治を行なうことによって、よい治療効 果をあげています。この事実は、月経に関する中医の理論が、しっかり した実践的な基礎を有しているということを証明していると考えられま す。けれども、この月経周期が調節される理由について集中して論じら れたことは今だかつてありませんでしたので、今ここに、中医学の基礎 理論に基づいて、次のような試論を組み立ててみました。






月経が周期的におこる理由




月経の周期は月の満ち欠けに対応する



「月経」に「月」という文字があてられていることからも判るように、 月経は一月に一回おこります。これは月の満ち欠けの周期的な変化に対 応していると考えられます。中医学におけるいわゆる「天人相応」の考 え方によると、人間の気血は月の周期的な変化に対応して変化している わけですから、月経がおこることも月の満ち欠けに対応した結果ではな いかと考えることができます。つまり海の干満が月の満ち欠けに対応し て変化していることと同じようなものではないかと考えるわけです。

このことを《素問・八正神明論》では、『月が始めて生じるとき〔訳注 :月齢の一日目〕には血气も始めて精となり〔訳注:月にしたがって新 たに生じ〕、衛気も始めてめぐる。月郭が満ちてくれば〔訳注:満月に なると〕血気も充実し、肌肉も丈夫になる。月郭が空虚であれば肌肉が 減り、経絡も虚し、衛気も去り、形だけが独り残るようになる。これは 天の時にしたがって血気も調えられるということを示している。』と述 べられています。また、《景岳全書・婦人規》でも月経の周期について 解釈して、『女性の身体は陰に属し、その気は月と対応する。月は三十 日に一回満ち、月経は三十日に一回おこる。一月は規則的にやってくる が、月経も常態では変わりなくおこる。そのため、月経・月信と呼ばれ ているのである。』と述べられています。これらの説は、月経の周期が 形成されてきた理由を、大自然による人類への長期間にわたる影響の結 果であると考えているわけです。




月経の周期は先天を根源としている



中医学における『身体の根本は、先天に本づいている』という説による ならば、人体の生理的な周期的現象は、先天によって規定づけられてい ると考えなければなりません。このことは月経においても当然その通り に言えることです。




まとめ



以上の二種類の考え方のうち、前者は月経の周期が形成される外因につ いて述べており、後者は先天的な遺伝性という内因について述べていま す。

実際の人間における生理的な活動というものは、この両者が複雑に関わ りあうことによって成立しています。ですから、生理的な周期的現象が 外的影響によって形成されたものであると考えるとしても、その外的な 影響は必ず内的な状態を通じて作用するということを、ふまえておかな ければなりません。たとえば、同じような外的状況下にあっても内的な 状態は個人々々で異なっているわけですから、異なった生理的な周期性 を呈することになるわけです。ですから、月経の周期も、初潮の時期も、 閉経の時期も、それぞれ個人によって多少の差があるわけです。

しかし、基本的な周期は一致しています。この基本的な月経周期が形成 されてきた理由についてのもっとも一般的な見方は、先天的な身体が自 然界という外因によって長期間にわたって働きかけられた結果こうなっ ているという考え方です。つまり、外的自然界のリズムが体内の生理的 なリズムに長期にわたって作用した結果、身体の生理的なリズムをコン トロールし、それに身体が適応していったと考えられているわけです。









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