月経の周期





月経の周期は、女性の生殖機能という生理的な過程の中で、陰陽の 消長・気血の変化を表わしています。

月経がおこる過程の中には、陰陽の消長と気血の満虚という変化に ともなって、月経期・経後期・経間期・経前期という生理的なリズムが あり、これらによって月経周期が構成されています。ここでは一周期を 28日として説明していきます。




1、行経期(1日~7日)



この期間は子宮から血液が排泄されている時期で、いわゆる月経にあた ります。この時期には、衝脉・任脉・子宮の気血が月経前の充満してい た状態から徐々に空虚になってきているため、気血のバランスもふだん より崩れやすく、腎気や天癸の作用も相対的に弱くなっています。です から、このような状態のときには、月経異状の内在的な要因が形成され 易いと考えられます。




2、経後期(7日~14日)



行経期には、血海は空虚になり、子宮の気血も充実した状態ではなくな ります。それに継いで、少なくなることによってまた大きくなり、古い ものが取り除かれて今度は新しいものが生まれます。ですからこの時期 には、衝脉・任脉・子宮の気血が徐々に回復していく段階であると言え ます。つまり、腎気が盛になり、気血が調い、血海が充実してくること によって、腎気が上升して生化がふたたび始まるわけです。




3、経間期(14日目前後)〔排卵期〕



《易経・繋辞下伝》には、『天地の陰陽の二気がもつれあい一つになる ことで、変化して万物となり、それぞれの美しい性質が完成する。男女 雌雄が各々の精を一つに合わせることによって、万物の形に変化生長す る。』〔訳注:この部分の訳は《易》本田済:朝日新聞社のものにより ました〕とあり、また《女科証治準縄・求子》には袁了凡の言葉として、 『天地の間に生息する生き物には、必ず絪縕(いんうん) 〔訳注:陰陽の二気がもつれあい一つになること:綿入れの中の綿のよ うに充実し元気盛なこと〕の時期があり、万物が生化するには、必ず養 うべき時期がある。・・・(中略)・・・これは天然自然の節目であり、 生化がおこるための絶好の機会である。・・・(中略)・・・。婦人に おいても一月に一度の月経があり、また必ず一日の絪縕の時 期が、辰の時間〔訳注:午前7時~9時〕にある。この時になると、気 が蒸して熱に昏むため、もだえて性交する欲望を我慢できなくなる。こ れがその時期の徴候である。これに逆らって気を蓄めると丹を成し、こ れに従って性交をすると子供ができる。』と解説されています。これら の説によると、月経周期の間には一日、天然の絪縕の状態と なる時期があるということになります。この時期には陰陽ともに生長し て、腎気が充実して盛となり、陽気が発動して陰精が泄らされます。こ れが排卵の時期です。この時期に性交をすると妊娠する可能性が高くな ります。




4、経前期(14日~28日)



この時期、絪縕の時期に妊娠した場合には、胎児を育む環境 を子宮が提供していることになります。すなわち腎気の主導の下、肝に よって血量が調節され、脾によって生化が施され、心によって子宮に関 わる経脉が主られて、衝脉・任脉の気血がふたたび充実して、子宮の中 に注がれるわけです。子宮は、衝脉・任脉に栄養されることを通じて、 先天の腎精・後天の精血に充分養われ、気血が非常に盛になります。こ れによって、胎児が成長していく環境が調えられるわけです。このよう に、妊娠している場合は子宮は精血を集めて胎児を養うわけですが、も し妊娠していい場合はここに注がれていた血は古くなり、月経として子 宮から排泄されることになります。




5、まとめ



陰陽が互いに進退しあうことによって、生長収蔵し・終わってまた始ま り・満虚消長の変化がおこります。腎はこの陰陽の本であり、腎気はこ の生理的な過程の中で、少から盛にそして盛から衰へと変化していきま す。天癸は腎気にしたがって、少から盛となって分泌され、そしてまた 少となり竭して止まるというふうに変化します。さらに、この腎気の主 導と天癸の作用の下、さらに言えば、肝が血を蔵し・脾が血を統べ・心 が血を生じ・肺が気を主ることによって血を統帥するという共同作業の 下、衝脉・任脉の気血もまた盛な状態から満ちる状態となり(経前期)、 満ちる状態から溢れる状態となり(行経期)、溢れることによって徐々 に虚し、虚すことによってまた徐々に盛となり(経後期)、血気が旺盛 となって、陰が生じ陽が動じて絪縕の時期となって精が泄れ (経間期)、継いで血海がふたたび充実して、衝脉・任脉が注がれるこ とによって子宮は養われ、胎児を養うわけです(経前期)。

このように見てきて判ることは、月経周期は、腎気・天癸・衝脉・任脉 ・子宮・気血の状態が規則的に変化することによってできているという ことです。また、月経周期の中のこの異なった4段階は、さらに次の月 経周期へと続いて、同じような月経周期を形成することになります。こ れはまさに《血証論・男女異同論》に説かれているところの、『新しい ものが生ずると古いものが取り除かれるということは、天地自然の理で ある。そのため月には満ち欠けがあり、海には干満があるのである。女 子の血は、古いものが取り除かれて新しいものが生じ、これが満ちて溢 れ、満ちたものは必ず虚すという道を通過する。女子には毎月一回の月 経があるが、これは血の余りを泄らしているのである。』にあたります。



以上、月経周期の規則性について述べましたが、これはあくまで推測の 域を出るものではありません。参考とするに留めておいてください。









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