痛経の状態と診断






臨床表現



本症の臨床的な特徴は、小腹部の疼痛を主証とし、月経周期に従っ て発作がおこるということです。

一般に、疼痛の多くは月経前1~2日あるいは月経第一日目におこ り、激烈な疼痛は30分~2時間におよび、それについで、連続する中等 度の疼痛がだいたい12~24時間続いて徐々に消失します。またときに は、月経2~3日まで疼痛が続くこともありますし、月経が終わってから 疼痛がおこり始めることもあります。その疼痛には軽いものも重いものも あり、多くは急激な絞るような痛みをおこしまたあるいは持続的な耐え難 い隠痛〔訳注:じくじくとした深い痛み〕がおこります。また、激烈な疼 痛がおこっている時には、その痛みが腹部全体や腰骶部あるいは大 腿の内前側にまでおよぶことがあります。その患者さんは、顔面が蒼白と なり・冷汗が出・手足が冷え・悪心・嘔吐をおこすことがあり、さらに甚 だしい場合は昏厥をおこしたり虚脱状態となります。けれどもこのように 激しい疼痛であっても、日がたつにつれて自然に弱まっていき、月経が終 わると一般的には消失します。




診断と鑑別診断



病歴に対する詳細な問診と全身的な検査および婦人科の検査を行な い、その痛みが全身的なものや局所の器質的な疾病によって引き起こされ るものではないことを確認します。また、その臨床的な現われ方と疼痛の 診察および月経周期との関係に基づいて、診断を確定します。

その他の原因による腹痛であれば、もし月経時期におこったとして も、月経周期にしたがって周期的におこるということはありません。また、 痛経においては一般的に、腹部筋肉の緊張は見られず、また反跳痛〔訳注 :腹部を圧迫して急激に手を離すことによって痛みが激増する診察法のこ とか〕もありません。さらに、経血が順調に排出されていく時には、それ にしたがって疼痛も必ず緩解していきます。









一元流
婦人科学 前ページ 次ページ