閉経前後の諸症の病因病理




女性の閉経の前後(42才~49才)の時期は、その健康状態が徐 々に衰え、老年へと向かっていく時期です。腎気が日々衰え、天癸が竭し、 衝脉・任脉が徐々に虚し、精血も日々衰えてきますので、腎の陰陽が失調 しやすくなり、さらには臓腑の機能も失調しやすくなります。しかし多く の女性は、自身の臓腑の調節機能によって、このような時期をも順調に経 過していくことができます。その中でも少数の、体質が虚弱であったり・ 妊娠や出産や育児・疾病・栄養状態・労倦・社会環境・精神的な問題から、 自身の調節機能では対処できずに、一連の臓腑の機能の失調をおこして、 さまざまな症状を呈する場合があるわけです。







たとえばもし、腎陰が不足している場合、陰虚によって内熱が発生 して、潮熱や顔面の紅潮・高熱や発汗・五心煩熱などの症状が現われます。 陰虚で精も虚していれば、頭暈耳鳴・腰膝がだるく力が抜ける・脚や踵に 痛みが出るといった症状を呈することがあります。陰虚によって血が燥け ば、皮膚が潤いを失い・陰部が燥いて不健康な状態となります。また、血 が燥いて風を生じると、皮膚の感覚異常が現われたり、麻木や掻痒を覚え たり、皮膚の中を虫が歩いているような感じがしたりします。陰虚によっ て陽が亢ぶると、頭暈頭痛・煩躁易怒・失眠多夢といった症状が現われま す。また腎気が不足して衝脉・任脉がしっかりしなくなると、月経が乱れ ・周期が早くなり・経血量が多くなり・崩漏がおこり・膀胱の締まりが悪 くなるため頻尿や失禁をする、といった症状が現われます。

腎陽が虚して臓腑や経脉が栄養されにくくなると、浮腫・泄瀉・薄 く透明な帯下の量が増え・腰背が冷痛するといった症状が現われます。

さらには、陰損が陽に及んだり陽損が陰に及ぶことによって、陰陽 両虚の証が現われます。







そもそも腎は、その他の臓の陰陽の本となるものですから、この腎 の陰陽の失調は、肝腎・脾腎・心腎の変調となって、さまざまな病理的状 態を呈することになります。そのため、閉経前後には非常に複雑で多様な 症状が現われるわけです。









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