胞衣不下(後産が出ない)




胎児が分娩された後、30分以上胞衣が腹内に留まって自然には娩 出されなくなっているものを、「胞衣不下」あるいは「息胞」胎衣不下」 「胎衣不出」などと呼んでいます。







胞衣とはすなわち現在いうところの胎盤です。一般的には胎児が娩 出されてから15分から30分以内に、胞衣は自然に子宮から剥がれ落ち てきます。もし30分以上たっても胞衣が娩出されなければ、病理的なも のとして考えます。

出産時には、人によって異なる量の出血が陰道からあります。もし、 陰道から多量の出血がある場合、血虚によって気も脱するため、暈厥〔訳 注:失神〕することがあります。もし陰道からの出血が少量であったり、 全く出血がない場合でも、子宮内部で多量に出血していてそれがたまって いる場合、腹部が膨れてきます。このような場合に腹部を圧迫したり子宮 を圧迫すると、大量の血塊や血液が流れ出し、これによって産婦はまた、 暈厥〔訳注:めまい〕をおこすことがあります。このような事態になると、生命と健康にた いして、非常に大きな害が出てきます。







この外、胞衣がまだ降りていない時期に、その処置が遅れたり不適 切であったりすると、寒・熱・湿といった邪気が、虚に乗じて陰中や子宮 の内部を直接侵すことがあります。もし侵されると、産後の発熱・拒按の 腹痛・陰道から紫黒色の穢臭を伴った出血、といった症状を呈し、弦数と いった脉状を呈します。これは、正気と邪気とが互いに争っている状態で す。このような状態で瘀血と熱とが結びつくことになると、非常 に多くの変証を引き起こすことがありますので、慎重に治療しなければな りません。このような症状が現われた時には、西洋医学による治療を主と するか、中医学と西洋医学とを勘案して処置します。









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