産後発熱




産褥期における発熱を主証とし、さまざまな症状を伴うものを、 「産後発熱」と呼んでいます。







産後一二日のころは、出産における疲労や出血によって、産婦の陰 血が急激に虚していますので、陽が拠り所を失い、陽気が外に浮越して、 営衛のバランスが失調した状態となり、微熱が出ます。しかしこの熱は、 栄衛の調和が回復されるに従って、治療しなくとも自然に下がってきます。 ですからこれは、生理的な発熱に属するものです。

これに対して、発熱がひかずに長引いたり、突然高熱を発したりす るものは、産後発熱という病症であると考えなければなりません。このよ うな産後発熱は、産後十余日以内によくみられます。この産後発熱には、 さまざまな症状を伴う特色があります。しかしどのような原因によってこ の発熱がおこるにせよ、熱という陽邪によって気や津液が耗消されて、出 産によって気も陰もともに傷られている産婦の身体を、さらに損傷してい くという心配があります。







中でも注意すべきことは、邪毒の感染や暑熱によっておこった産後 発熱は、もしその治療が不適切であれば、その熱邪が急速に営分や血分に 入り、甚だし場合は心包に内陥して、痙攣や人事不省といった非常に危険 な状態を引き起こすことがあるということです。

また、瘀血が子宮に停まったままであれば、邪毒に感染し やすくなります。また、授乳期に発熱がみられる場合は、乳腺炎の発症に 気をつけなければなりません。これを「蒸乳発熱」と呼んでいます。









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