産後の便秘の論治






治療原則



養血益気・滋陰潤燥を中心として治療します。血虚津虚のものは養 血潤燥し、気虚失運のものは益気潤腸し、陰虚火燥のものは滋陰益気潤燥 します。




用薬における禁忌と養生法



産後は、血液や津液を消耗していますので、薬を用いる場合には滋 潤のものを用いて、苦寒峻攻の薬物は用いないようにします。苦寒峻攻の 薬物を用いると、陰液をさらに傷り、さまざまな変証がおこることを避け ることができなくなるためです。

産婦は、床より出て、適切な運動をし、腸の蠕動を助けるようにし ます。飲食は、肉食を避け、野菜類を増やして水をよく飲むようにします。




証候と証候分析






血虚津虚



産後大便が乾燥したり、数日間排便がなく、腹部には脹痛がなく、 顔色が萎黄で、皮膚に潤いがなく、心悸し失眠となり、淡白舌薄白苔で、 その脉状が細のものです。

この証の原因は、分娩時の出血過多あるいはもともとの血虚が出産 によってさらに虚したことにあります。そのため、栄血が不足し、津液が 虚損して、腸が潤いを失って、産後大便が乾燥したり、数日間排便がなく なっているわけです。裏が実しているわけではありませんので、腹部には 脹痛がありません。血虚がありますので、上に顔を養うことができず、外 に皮膚を養うことができません。そのため、顔色が萎黄となり、皮膚に潤 いがなくなるわけです。心が血によって養われなくなりますので、心悸し 失眠となります。淡白舌・薄白苔・脉状の細は皆な血虚の徴候を現わして います。




気虚失運



産後数日間排便がなく、時に便意がおこってトイレにいっても、い きむ力がなく、大便は堅くはなく、発汗して短気で、排便後に倦怠感が非 常にきつくなり、淡白舌薄白苔で、その脉状は緩のものです。

この証の原因は、もともと虚弱体質だったものが、分娩によってさ らに気を消耗したことにあります。そのため、大腸の伝導の力が弱くなり、 産後数日間排便がなくなるわけです。気虚下陥のため、時に便意がおこっ てトイレにいっても、いきんで出す力がありません。火熱によって乾燥し て結しているわけではないので、大便は堅くはありません。気虚のため外 の衛気がしっかりしていませんから、発汗して短気となります。排便する とさらに気を消耗しますので、排便後に倦怠感が非常にきつくなります。 淡白舌・薄白苔・脉状の緩もまた気虚の徴候を現わしています。




陰虚火燥



産後数日間排便がなく、排便があったとしても非常に渋り、大便は 堅く結しているものです。その顴骨は赤く、咽は渇き、五心煩熱し、大腹 部がつかえ、腹部は脹痛し、尿は黄赤で、紅舌薄黄苔で、その脉状は細数 となるものです。

この証の原因は、もともと陰虚のものが出産によってさらにその陰 液を虚損したことにあります。そのため、陰が虚して火が盛んとなって腸 液を灼き、腸が燥き渋りますので、産後数日間排便がなく、排便があった としても非常に渋り、大便は堅く結しているわけです。陰虚内熱となりま すので、その顴骨は赤く、咽は渇き、五心煩熱します。燥屎が内に停滞し て蓄っていますので、気機がのびやかに循らなくなります。そのため、大 腹部がつかえ、腹部は脹痛します。熱によって津液が傷られていますので、 尿は黄赤となります。紅舌・薄黄苔・脉状の細数も皆な、陰虚火燥の徴候 を現わしています。









一元流
婦人科学 前ページ 次ページ