第 四十七 難

第四十七難




四十七難に曰く。顔面だけが寒に耐えることができるのはどうしてなのでしょうか。


人身はもともとひとつの気が周流しているものです。ですから全身が同じであるべきなのに、顔面だけが寒に耐えることができるのはどうしてなのでしょうか。






然なり。人の頭は諸陽の会です。諸陰の脉は、皆な頚胸中に至って還ります。ただ諸陽の脉だけが、皆な上って頭に至ります。


頭は人身の最も上部に位置します。陽の性質は極まり升るものですので、諸陽に属するものは皆な頭面に集会します。頭面が純陽の場所ですので、手足の陰経はここに至ることができず、胸までで還ります。また人身を四方に配すると、左は東で、右は西で、下陰は北で、腹部は中央にあたります。そして頭面は南にあたりますので陽会となり、下陰は北にあたりますので陰会となって、その穴もまた会陰と名づけられています。


問いて曰く。足の厥陰の経は、上って巓〔訳注:頭頂部〕に至ります。陰経が頭面に至らないというのはどういうことでしょうか。

答えて曰く。陰経は、皆な手足から胸に至るまでを脉度の数に入れます。ですから巓に至るものは絡の会であって本経ではありません。もし本経とするならば、一十六丈二尺の数に合わなくなります。師は、頭面に陰経の輸穴はありません、輸穴がないということは諸侯の采地〔訳注:領地〕がないようなものです、ですから他の分野に至るとしても、ただ行って会するだけで、それ自身がそこに位置しているというのではありません、と言われていました。






ですから顔面は寒に耐えることができるのです。


顔面は純陽堅剛の場所ですから邪がこれを侵すことはできません。もし顔面が傷られるときは治し難いものです。眼昏・耳聾・鼻口・歯舌の病が治り難いということから判ると思います。また頭面は人身の陽とします。ですから風暑の陽邪が入り始めるときは頭痛項強・鼻舌口歯咽喉等の病症を呈することはありますけれども、頭面だけを傷るということはありません。その外来の邪は、他から移動して頭面に及んでいますので、このようなものは必ずしも治り難いものではありません。



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