難経原文 八



六十四難に曰く。《十変》にはまた、陰井は木であり、陽井は金。陰栄は火であり、陽栄は水。陰兪は土であり、陽兪は木。陰経は金であり、陽経は火。陰合は水であり、陽合は土とあります。陰陽によってすべて異なっていますが、その理由は何なのでしょうか。

然なり。これは剛柔の事です。陰井は乙木であり、陽井は庚金です。陽井は庚であり、庚は乙の剛です。陰井は乙であり、乙は庚の柔です。乙は木とします、ですから陰井は木であると言うのです。庚は金とします、ですから陽井は金とします。他は全てこれに倣って考えてください。





六十五難に曰く。経に、出る所を井とし、入る所を合とするとあります。その理由は何なのでしょうか。

然なり。出る所を井とします、井は東方の春であり、万物の始生です、ですから出る所を井とすると言うのです。入る所を合とします、合は北方の冬であり、陽気が入蔵します、ですから入る所を合とすると言うのです。





六十六難に曰く。経に、肺の原は太淵に出、心の原は太陵に出、肝の原は太衝に出、脾の原は太白に出、腎の原は太谿に出、少陰の原は兌骨に出、胆の原は丘墟に出、胃の原は衝陽に出、三焦の原は陽池に出、膀胱の原は束骨に出、大腸の原は合谷に出、小腸の原は腕骨に出るとあります。十二経全てが兪を原としているのはどうしてなのでしょうか。

然なり。五臓の兪は三焦の行く所であり、気が留止する所です。

三焦が行く所の兪を原とするのはどうしてなのでしょうか。

然なり。臍下腎間の動気は人の生命であり、十二経の根本です、ですから原と名づけています。

三焦は原気の別使です。三気を通行させ五臓六腑を経歴させることを主ります。

原は三焦の尊号です。ですから止まる所を原とします。

五臓六腑に病がある場合は、皆なその原を取ります。





六十七難に曰く。五臓の募は皆な陰に位置し、兪が陽に位置するのはどうしてなのでしょうか。

然なり。陰病は陽に行き、陽病は陰に行きます。ですから募穴は陰に位置し兪穴は陽に位置しているのです。





六十八難に曰く。五臓六腑には皆な井栄兪経合があります。これらは何を主る所なのでしょうか。

然なり。経に、出る所を井とし、流れる所を栄とし、注ぐ所を兪とし、行く所を経とし、入る所を合とすると言われています。

井は心下が満ちることを主り、栄は身熱を主り、兪は体重節痛を主り、経は喘咳寒熱を主り、合は逆気して泄することを主ります。

これが五臓六腑、井栄兪経合が主る所の病です。





六十九難に曰く。経に、虚するものはこれを補い、実するものはこれを瀉す、虚せず実してもいなければ経をもってこれを取るとありますが、これはどういう意味なのでしょうか。

然なり。虚するものはその母を補い、実するものはその子を瀉します。先にこれを補い、その後にこれを瀉します。虚せず実してもいなければ経をもってこれを取るのは、正経が自ら病を生じているもので外部からの邪にあたっているものではありません。ですから自身の経を取るわけです。ですから経をもってこれを取ると言っているのです。





七十難に曰く。春夏には浅く刺し、秋冬には深く刺すとは、どういう意味なのでしょうか。

然なり。春と夏とは陽気が上にありますので、人の気もまた上にあります、ですから浅くこれを取ります。秋と冬とは陽気が下にありますので、人の気もまた下にあります、ですから深くこれを取ります。

春と夏とにはそれぞれ一陰をなし、秋と冬とには一陽をなすというのはどういう意味なのでしょうか。

然なり。春夏は温です、この時期に必ず一陰をなすということは、初めて鍼を下したときにこれを腎間の部に至るまで沈めて、その気を得てから引き上げこの陰を保持するということです。秋冬は寒です、この時期に必ず一陽をなすということは、初めて鍼を下したときにこれを心肺の部位に至る場所で浅く浮かべて、その気を得てからこれを推し入れてこの陽を入れるということです。

これを春と夏とにはそれぞれ一陰をなし、秋と冬とには一陽をなすと言っているわけです





七十一難に曰く。経に、栄を刺して衛を傷ってはいけません、衛を刺して栄を傷ってはいけません、とあるのはどういう意味なのでしょうか。

然なり。陽に鍼刺する場合は、鍼を臥せて刺します。陰に鍼刺する場合は、先ず左手で鍼を刺す場所の栄兪の位置を摂按し、気を散じさせてから鍼を内(い)れます。

これが、栄を刺して衛を傷ることがなく、衛を刺して栄を傷ることがないという言葉の意味です。





七十二難に曰く。経に、よく迎隨の気を知りこれを調えなければなりません、調気の方法は必ず陰陽にありますとあるのは、どういう意味なのでしょうか。

然なり。いわゆる迎隨とは、栄衛の流行と経脉の往来とを知って、その逆順に従ってこれを取ることです。ですから迎隨と言います。

調気の方法は必ず陰陽にあるとは、その内外表裏を知り、その陰陽に従ってこれを調えるものです。ですから調気の方法は必ず陰陽にあります、と言われているのです。



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