職業

氏族に於ける職業の分掌は、やがて家業尊重の精�~を生んでをり、家業の尊重は家名即ち名を重んずることとなる。我が國の古代に於ける名は、個人の氏名の意味ではなく、氏の職業が名である。こゝに我が國民の職業を重んじ、家名を尊重する精�~を見ることが出來る。而してつとめの尊重は、宣命を始めとして多くの史實に見られる。天武天皇の御制定になつた冠位の名稱にも勤務追進の文字が用ゐられてゐる。この勤務尊重の精�~は、生産・創造・發展のむすびの心であつて、我が國産業の根本精�~である。この精�~は古來農業に於て最もよく培はれた。

豐葦原の瑞穗の國といふ我が國名は、國初に於ける國民生活の基本たる農事が尊重せられたことを示すものであり、年中恆例の祭祀が農事に關するものの多いのもこの精�~の現れである。天照大�~を奉祀する内宮に竝んで外宮に豐受大�~を奉祀し、上、皇室を始め奉り、國民が深厚なる崇敬を捧げ來つてゐることにも深く思を致すべきであろう。

國民の職業が農業の外に、商業・工業等種々なる方面に分岐發展してゐる今日に於ては、農業を尊重し給ふと同じ御心は、これらのあらゆる産業についてもうかゞふことが出來る。昭憲皇太后の御歌に、

ひのもとのくにとまさむとあき人のきそふ心ぞたからなりける

と詠ませられて、商業の重んずべきことを示し給うてゐる。我等はよくこの御精�~を拜して、時勢の進運に伴ひ、各々その職業にいそしまねばならぬ。