時系列で特に関心を引くものとして、
・ 若いころには盛んにスポーツをしていたが、それをやめて飲酒 を嗜み食事の不摂生とともに体重が徐々に増加している点。酒 と夜食を継続することによって、血圧が上がり暑がりになり痰 が出始め、足先が冷える。これに二陳湯が無効。
・ 前の会社をやめるにあたってのストレスと、その後のキーンと いう耳鳴りがいまだに続いている。
・ 勤め先変更一年後の尿赤気味。顔のほてり。尿赤に関しては竜 胆瀉肝湯の服用と水分摂取の増加により改善するが、顔のほて りはいまだに続いている。
・ その一年後から続いている脇肋部の脹満。
このような状態の悪化の積み重ねがある中で、さらにパソコンの使 いすぎに伴う両目の眼精疲労と目の奥の痛みが症状として出ている ているということです。
このように症状が積み重なり現在に至っているということは、体質 的には悪化傾向にあるということを意味しており、まさに生活の仕 方そのものに問題を抱えており、生活を改める必要があるというこ とが明確に示されているわけです。
それではどうすればよいのか。
これが病因病理を通じて明確にされるべき課題であると考えられま す。
体表観察として明確なのは、心肺の困窮があるということと、脾気 の弱りの問題です。ことに脾は、胃兪脾兪が割れたり二行になった りしているということ。脾募に大きな湿痰が載っているということ から、内湿が著明であるということがうかがえます。ことに左の脾 募は熱感を伴って大きくなっています。また、ゼミにいらしたとい う程度のちょっとした刺激で数脉を搏つほど心が敏感になっていま す。
これは、何らかの身心の状況の変化が起こると、痰迷心竅;狭心症 などの症状を呈する可能性があるということを示していると私は考 えています。(そこで、あの数脉はどうですか?という問いにつな がりました。)
すでに心肺の困窮が経穴には明確に現れていること、それを肝気を 張って堪えているようにみえることなどから、これはかなり切羽詰 っていると私には思えます。つまり肝気の張りによる支えが崩れる と、どっと脾腎の虚と心肺の困窮とが症状として出てくる恐れがあ るということです。それほど不安定な状態であると考えられるわけです。
弁証は湿困脾土にして脾虚
論治は急いで脾気を救い、脾の陽気を起てて内湿を排除する
目標としては、左脾募の変化と、背部の脾兪胃兪の変化。
ご本人にぜひ行ってほしいことは、食事の節制による体重のコント ロール。そして心肺に負担のかからない程度の運動(軽い散歩)と いうこととなります。夜の酒食をできれば制限して、空腹を楽しめ るように、一日に一回は空腹を味わえるようにしてほしいところで す。
朝に残る腹満はもちろん非常に問題ですので、ご本人としてはこれ がなくなるまで節制を厳しく行っていただきたい。
主訴は眼精疲労ということですが、これはこのように身体全体が困 窮しているところに無理を重ねたために起こっていることです。局 所的に熱や欝滞を取るということで一時的に解決する可能性はあり ますけれども、上記したとおりより複雑な病理の上に起こっている 問題ですから、根本的な治療と継続的な節制とをお奨めします。
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