治療指針:生活提言


頸肩腰痛の弁証論治
病因病理:弁証論治




病因病理



今回の病院受診のきっかけは、初夏の頃から起こり始めたホットフラッシュのようなのぼせであった。同じ頃から腰痛が酷くなり、特に朝、痛みが強くでた。病院で温経湯を処方され、1ヶ月ほどするとのぼせはずいぶん良くなり、慢性的な腰の痛みも和らぎ、胃の調子も良くなってお通じが毎日出るようになった。

これは、温経湯の補血作用により肝腎の陰気が補われて根がしっかりし、理気により疏泄もよくなって、肝陽上亢によるのぼせが無くなったと思われる。







温経湯を服用する前の腰痛の状況をみると、体の成長期の無理な運動が徐々に腰に負担を掛け、腰という局所自体を弱くした、つまり腰の器が脆い状態のままになったものと思われる。腰を支える筋肉を鍛えると腰痛が良くなったのも、腰の器の脆さが補われるためだと考える。入院以降の腰痛は、腰の器が一段と脆くなり、足に痺れを伴う時が出てきて、慢性化しており、経絡経筋病の範囲が広くなっていったと思われる。

しかし今回温経湯で腰痛に改善が見られたことから、臓腑病の要素が強く関係していたと考えられる。この臓腑病が深く絡み始めたのが、ホットフラッシュが出始めた初夏の頃と考えられ、この頃から腰痛がきつくなっており、特に朝が一番辛いという、腎陽虚による腰の痛みが強く出始めているように思われる。そのためこれ以前の経絡経筋病の要素が大きかった腰痛と今回の腰痛に、痛み、痺れの違いを感じているのではないかと考えられる。

ホットフラッシュと腰痛が酷くなる1年くらい前から徐々に生理周期が短くなり始めていることを考えると、この頃から年齢的な腎虚が起こり始め、それがバランスを崩してしまい、今回のホットフラッシュや腰痛の悪化へと繋がっていったのではないかと推察される。

温経湯による補血と下焦の温経散寒により、慢性的な腰の痛みは随分良くなったものの、まだ痛みは時々あり、冷えたりすると増悪している。これは腎の陰陽が補われ腎器は立ち直りつつあるものの、腰の場としての元々の弱さに加え、腎気の補いが充分ではないために、冷えて痛みが出たり、冬になって腰が硬くなるように感じたりするものと考える。







温経湯の服用で、腰痛やホットフラッシュの改善以外に、肝気の上逆によるものと思われる生理前の頭痛や吐き気、肝鬱による生理痛、肝気の横逆による胃痛が減っている。これは肝腎の陰分が補われ、器の土台が養われたことに加え、温経湯の活血作用により理気もなされて、肝鬱が払われたためと考える。

胃痛に関しては、補陰により、胃の器自体が養われて脾気が立ち、肝気の横逆を受けにくくなったとも考えられる。補血に加えて健脾の作用により、潤腸されお通じがスムーズにつくようにもなった。以前はあまりに脾気が弱いために、1週間お通じが無くてもお腹の張りなどを感じたことは無かったが、脾気が立ってきたために今はお通じが出ないとお腹が張ったり、痛くなったりと脾胃の器が敏感になってきていることからも脾気が立ってきたことが窺える。

こうやって陰陽のバランスが整い始めたことで、体も自己回復しようとして寝ても眠たいという状態になったと考える。







ただもう一つの主訴である首肩の痛みは、温経湯の服用で唯一変化が無かった。この首肩の痛みは経絡経筋病の可能性が高く、長時間のデスクワークなどでずっと動かずにいることで痛み、経絡の阻滞がおきやすくなっていると思われる。理気の作用のある温経湯で痛みに変化が無かったということは、首の局所自体の問題で、首の弱りが大きいと考えられる。

このように温経湯の服用以来ずっと体調が良かったものの、初冬頃からお通じの回数が減り、生理前の下腹部痛があったりと、一段と寒くなったことで、温経湯による陽気の補いでは足りなくなってきていることが窺え、特に腎陽の補充が必要かと考える。




弁証論治



弁証:腎陽虚

論治:温補腎陽







主訴:問診

時系列の問診

切診

五臓の弁別

病因病理:弁証論治

治療指針:生活提言











一元流
しゃんてぃ治療院