施術


バセドー体外受精の弁証論治
病因病理:弁証論治:治療指針:生活提言




病因病理



15歳のころからバセドウ氏病を発症するものの、動悸、疲労という症状に対して、 初発時は3年間の服薬をしたものの、その後は、再発しても半年程度の服薬です ぐに収まるというように、バセドウ氏病そのものは、大きな問題にならず経過し ている。







不妊治療をするものの、IVF-ETにて妊娠流産したり、化学的流産になるごとに、 動悸がし、疲労感が強くなるバセドウ氏病が再発している。

これは、不妊治療で腎気が消耗しているところに、妊娠することで陽気の発動が つよくなったため、心熱がこもり、バセドウ氏病の再発となっていると思われる。







お体を拝見すると、一番目立つのは臍を中心とする任脉上の舟形のゆるみである。 これは任脉の生命力の薄さと、全身のくくりでもある臍の力の弱さのあらわれで もあろう。臍、任脉を中心とする全身の気虚をあらわすものと考えられる。 また、全体に弱い脈、舌の歯痕胖大も全身の生命力の虚損である気虚のあらわれ と考えられる。

また背部輸穴も、全体に力がなく、そのなかで特に目立つのが、肝兪から脾兪ま でが平板な感じになり、胃兪が大きく抜け、その上で左の胃兪から三焦兪にかけ ての大きなゆるんでしまっているところである。これは、肝胆を脾兪胃兪で必死 に支えようとしているが、三焦兪までにおよび支えきれていないということを示 し、身体をなんとか持たせているのが脾胃の力であり、それもかなり疲弊し、三 焦兪という腎気まで使いながらなんとか支えていることをあらわしている。この 状態で、腎兪、三焦兪に負担のかかる不妊治療などをすることで全身状態がすぐ に悪化することは明瞭である。

手の三焦経、心包経が表裏で内関のゆるみ、外関の大きく広がって薄っぺらくなっ ているということは、陰陽ともに虚損という全身の気虚のあらわれと考えること もできるし、内関という心気のゆるみの問題、外関という三焦(腎)の弱さのあ らわれともみることができよう。

また左足の公孫がこそげ、外反母趾となっているのも、背部輸穴の脾胃の穴がへ たりながら、肝胆をささえているのと同様に、生きるということをなんとか肝気 を張って頑張っている(つまり、普通に生活すること自体で、肝気を張らなくて はならないぐらい、身体の虚損状態が強い)というあらわれとも考えられる。







問診上では、寝つきもよく眠りも深く、便通も一日一回時々で切らないことはあ るものの、さほど問題のある便通ではない。小便も残尿感が時々あるという腎気 の弱さを候わせる項目があるが、全体としては大きな問題を呈してはいない。

しかしながら体表観察上は、上記のとおり非常に虚損し気虚の状態をあらわして いる。これは現在の生活がこの方にとって無理のないペースであり、食事も、 少食で30分以上かけることから脾胃に優しい状態を保っており(間食をやめると もっといいですね)、器を大事にする生活がなされているからだと思われる。

しかしながら、明瞭な腎虚、気虚状態のまま不妊治療で腎気を落としたり、 妊娠することで陽気の発動があったりすると、ふたたび動悸、疲労というバセド ウ氏病の再発と為り、妊娠継続が難しくなってしまうのだろう。

気虚を救い、腎気の器を少しでも充実させておくことが、非常に重要だと思われ る。




弁証論治



弁証 腎虚を中心とした気虚

論治 益気補腎




治療指針



腎虚が明瞭であり、腎虚を中心とした気虚ということで、身体の弱りの出ている、 三焦を使って(外関、三焦兪)治療をすすめていきたいところだが、不妊治療を 希望されており、腎気を高めることと、衝任脉の支えを作ることが肝要と考える。







この方の場合、生命力の弱さがくくりの弱さとしてあらわれ、手の三焦経と心包 経という表裏であらわれる弱さ、任脉と膀胱経(督脉)の身体の表裏の弱さとい う状態であらわされていると考えられる。

腎虚を中心とした気虚というときに、身体に表現されている、表裏のくくりの弱 さを目標に生命力をあげ、一元の人間としてのくくりをつけることが大切であろ う。これは不妊治療をすすめたときにおこしてくる、腎虚、心熱の亢進(バセド ウ氏病の状態)を防ぐ意味でも重要であり、腎気をあげ気虚を救 う大道であろう。この側面から考えると、臍を中心とする舟形のゆるみが、裏の 側面の治療目標であり、三焦兪の抜けが表の側面の治療目標であろう。







臍を中心とする任脉上の舟形のゆるみは、全身のくくりの甘さ、気虚状態を示す とともに、不妊治療で一番大事な、衝任脉の支えの弱さを如実に露呈していると 考えられる。この船形の緩みをしまりあるものとすることが、不妊をも含んで、 全身の気虚を救うものとなるのであろう。内関-膻中、気海、足三里ー公孫 あたりを観察し使用しながら任脉の緩みをしまりあるものとし、背部の胃兪、三 焦兪で納め全身のくくりをつけていこうと考える。




生活提言



全身のパワー不足(気虚)であり、無理がかかるとバセドウ氏病という内側に熱 のこもってしまう病態をおこすように、少し不安定なお体の状態でもあります。

日常の生活に無理がなく、食生活なども少食でゆっくりたべることなどが、胃腸 の状態をよくし、体調を保つのに役立っていると思います。ただ、これだけ無理 のない生活をしているのに、身体にあらわれた経穴などの状態や舌、脉などの状 態を観察すると、『病気ではない』ものの、『もろくパワー不足の身体』である ことは確かです。

不妊治療というのは、普通の方でも無理がかかるものです。気虚気味の方にとっ ては非常に負担となるでしょう。生活面で落ち着いた無理のない生活をなさって いますが、その上に、間食をやめ、日々お灸などをして、より養生につとめてい ただきたいと思います。







また、お話などをしていると、落ち着いて無理に気を立てて頑張っている方には お見受けしませんが、身体を拝見すると、かなり気をたて頑張って生活している ことがわかります。これは、気持ちが『がんばるぞー』となりやすいのか、『が んばるぞー』と気合をいれないと、普通の日常生活を送れない状態(つまり身体 の弱り)なのかと思います。もし精神的に力が入りがちであるようでしたら、気 持ちをリラックスして精神的に無理をしないこと。そして身体の弱りが中心であっ たら、今以上に気をつけて、養生につとめていただければと思います。

身体のパワー不足の気虚気味の方にとって、不妊治療はかなり負担です。 そのうえ、妊娠自体も大変だし、出産でも大きな傾きをおこし虚損病の発症とな ることもあります。いまのうちに養生をできるだけして、身体の力を少しでも底 上げしていくようにがんばっていきましょう。







主訴:問診

時系列の問診

切診

五臓の弁別

病因病理:弁証論治

施術











一元流
しゃんてぃ治療院
ビッグママ治療室