高校生の頃から生理痛がきつくなり、毎回痛み止めを飲まずには過ごせない ほどだった。それが20歳の頃には毎回生理痛はあるものの、薬を飲まずに済む 程度になった。これを見ると、高校生の頃にはすでに肝鬱傾向にあることが窺 える。腎器の成長過程にある高校生の頃にはまだ腎気が充実しきれていないた め、きつい肝鬱とのバランスが取れず、生理痛がきつかった。それが成人して 器がしっかりしてくると肝気と腎気のバランスが取れるようになり、生理痛が 軽くなったと考える。ただ生理前のイライラがたまにあったり、薬を飲まない までも毎回生理痛があることを考えると、肝鬱になりやすいタイプであると思 われる。
社会人になり、立ち仕事をするようになって夕方には足がむくむようになる。 28歳頃には一晩で風邪が治りきらなくなり、1~2年に1回頭痛がするように なった。30歳の頃には生理前に腰に鈍痛を感じるようになった。ただ32歳で仕 事を辞めると足のむくみはましになった。これらの流れから、肝気を張って頑 張りすぎ、腎気を損傷しやすい肝鬱腎虚の悪循環が、結婚して仕事を辞めるま での間、少しずつではあるがずっと続いていることが窺える。ただ腎器はしっ かりしていてそれほど大きく体調を崩さずに過ごせていた。
34歳で稽留流産の手術を受けた時も、少し生命力を落としたために、そのあと の3回の生理では毎回カンジタを発症したものの、1年後には再び妊娠できるま でに生命力は回復していた。
ただ35歳で出産したあとには、主訴を始めとするいろいろな体調不良が出るよ うになり、それが現在まで3年間続いている。出産でかなり腎気を損傷し、そ れをなかなか回復しきれないでいると思われるが、産後の不調は悪化傾向には なく、夜中まで家事を頑張って済ませてしまうこともできている。
これらのことから、もともと肝鬱傾向にある性格から、出産で腎気を損傷し たにもかかわらず、育児や家事をこなそうとして頑張ることでより肝鬱を起こ しやすくなり、産後の腎気の虚損を回復しきれずにいると考えられる。
お体を拝見しても、関元や背部兪穴など腎気との関連の経穴にそれほど反応が 出ておらず、問診でも食欲やお小水に問題が無いことから、腎気は底割れせず に頑張っており、肝鬱がきついことが中心課題であると考える。ただ列缺や肺 兪、厥陰兪の発汗から風邪の内陥が窺え、肝鬱を一層きつくして、腎気の回復 を妨げる一因となっていると考えられる。
肝鬱がきついということは気逆を起こしやすいということであり、そのためイ ライラや頭痛、耳鳴り、目の疲れなどを感じやすく、上焦に熱を持ちやすいの で吹き出物もできやすい。疲労感は夕方にきつくなったり、眠りが浅くなった りと、腎気の虚損もあるが、入浴で肝鬱が張れると疲労感が減っていることか ら、肝気の鬱滞が疲労感を増加させていると思われる。
また背部痛は、朝起きた時のみで、動き出せば治まっていること、昼寝では起 こらないこと、また痛みを感じる場所の切診では脾兪胃兪の弱りと、それに連 なる上部の経穴の筋張りがあることから、脾の陽気不足による背部の痛みでは ないかと考える。この脾陽虚は、厚めの白苔や脾募からも窺える内湿を生じ、 風邪の時に残る痰を生むことにもなっているのではないかと考える。
弁証:風邪の内陥、肝鬱、腎虚、脾虚湿盛
論治:去風散寒、疏肝理気、補腎、補脾去湿
|
|
|
|