胎児の発育状況




受胎すると胎児は女性の子宮の中で生長発育します。この胎児の発 育状態については、早くも北斉の徐之才によって描かれています。彼は 『妊娠一月め胚となり始め、二月め膏となり始め、三月め胞となり始め、 四月め形体ができあがり、五月めよく動き、六月め筋骨ができ、七月め毛 髪が生え、八月め臓腑が具わり、九月め穀気が胃に入り、十月め諸神が備 わり、日が満ちてすなわち産まれる。』【原注:《千金要方・養胎》】と 述べています。これらの言葉は現在から見ると事実とは異なっているよう に思えますが、この当時、このようにだいたい月で区分して胎児の発育状 況について示しているということには、非常に意義があると思います。




1、胎児の各月における特徴



受胎後2週間以内のことを精【原注:受精卵】と呼び、3~8週間を胚 胎と呼び、8週間以降のことを胎児と呼んでいます。

妊娠1ヶ月末まで:胚胎の長さはだいたい7、5~10mmになり、各 器官の原型となるものがすでに分化しています。

妊娠2ヶ月末まで:胎児はだいたい2、5cmの長さになり、人の形を 具えはじめます。また各器官の原型も形成されはじめます。この時期 に外界から悪い刺激【原注:病毒・薬物・放射線など】を受けると、 対応する器官の発育に影響を与えて、奇形となることがあります。

妊娠3ヶ月:胎児の身長は7~9cmになり、生殖器官が発育するため 性別を知ることができ始めます。頭は特に大きく、眼・耳・口・鼻・ 四肢が発育しはじめます。

妊娠4ヶ月:胎児の性別が明確になります。四肢はほんの少し活動し 始め、骨格の系統も発育してきます。胎児の身長は10~17cmで、 体重は100~120g、皮膚に艶が出て、顔色も赤くなり、少量の 胎毛があるものもいます。妊婦はこの頃から胎動を感じ出します。

妊娠5ヶ月:身長は18~27cm、体重は300gに達します。皮膚 は暗紅色で、全身に胎毛が生え、その頭にもわずかに頭髪が生えます。 胎児の心臓もよく発育してくるため、心音を聞くこともできいます。

妊娠6ヶ月:胎児の各器官はそれぞれ発育しており、皮下脂肪もでき 始め、皮膚には皺ができます。胎児の身長は28~34cmとなり、体 重は600~700gになります。

妊娠7ヶ月:胎児の身長は35~38cmになり、体重は1kg以上にな ります。その皮膚は胎脂で覆われますが、皮下脂肪はまだ少量です。 男児の睾丸は陰嚢へと下行し始めます。女児の大陰唇もでき始めます。 もしこの頃に何らかの原因で早産となっても、胎児は産声をあげられ、 また嚥下することもできます。しかしその生存能力は非常に低く、生 存させるためには特別な保護が必要です。

妊娠8ヶ月:胎児の体重は1500~1700gとなり、身長は40 ㎝になり、もし産まれても、保護が充分であれば生存が可能です。

妊娠9ヶ月:胎児の身長は45㎝、体重は2500gになり、産まれ るとよく泣いて、吸引することができます。生存率も高くなります。

妊娠10ヶ月:この時期になると胎児の身長は50㎝、体重は3kg以 上になります。「瓜が熟して蒂(へた)から落ちる」「粟が熟して自 然に弾ける」ように、胎児も月が満ちて産まれでるのを待っています。 胎児の身長が伸びる速度は一般的に妊娠早期の方が速く、胎児の体重 の増加にしたがっています。また、性別による成長速度の違いは比較 的大きいのですが、胎児の身長が伸びる速度はだいたい平均していま すので、胎児の身長によってその胎児が何ヶ月のものであるのかを判 定する上で臨床的な意義のある数字となっています。




2、未成熟児と過期胎児



だいたい妊娠28週~38週の間に出産され、その体重が2500gに 満たず、身長が45cm以下のものは未成熟児とし、早産児と呼びます。 早産児は皮下脂肪が少なく、皮膚に皺が多いので、その形は老人のよう に見えます。呼吸する力が弱く、泣き声もかすかで、体温は低く、死亡 率が高くなります。

これに対して妊娠が、出産予定日より2週間以上超過している胎児は、 過期胎児とします。過期胎児の皮膚は羊水によって長く浸されているた め、泡がつき皺ができています。皮膚上の胎脂も少なくなり、出産時に 窒息し易くなります。




3、胎衣・臍帯・羊水



〔省略:特記すべき東洋医学的な見地による記載がないため〕









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