産後の病の弁病弁証






産後の病の弁病弁証のポイント



産後病とは、分娩後から産褥期にいたるまでの間に発生する、分娩 と産褥に関する症状のことを指しています。







よく見られる産後病には、胞衣が降りない・産後血暈・産後腹痛・ 産後痙証・産後発熱・産後小便不通あるいは頻数・失禁・産後の便秘・産 後の泄瀉・産後の辱労・悪露が降りない・悪露が止まらない・産後の汗証 ・産後の身痛・欠乳・乳汁が自然に出ない・乳腺炎といったものがありま す。

この外に古くから産後の病証として、「三衝」「三急」「三病」と 呼ばれているものがあります。「三衝」とは、産後に降るべき悪露が降ら ず、敗血〔訳注:瘀血〕や濁液が逆上して衝き上げ、三種類の非 常に危険な証候を呈するものです。この三種類は、衝心・衝肺・衝胃です。 「三急」とは、産後の嘔吐・盗汗・泄瀉のことを指しています。「三病」 とは、痙病・郁冒・便秘を指しています。現在ではこのように分類して考 えることはありませんが、臨床時の参考として記しておきます。

また古くから産後の疾病の弁別法として、「三審」という方法があ ります。この一番目は、少腹部が痛むか痛まないかということによって、 悪露の停滞があるかないかということを弁別するものです。二番目は、大 便が通じているいないかということによって、津液の盛衰を判断する方法 です。三番目は、乳汁がよく出てるかどうかということと飲食の多少によ って、胃気の強弱を調べる方法です。







現在の我々が、産後の病を弁証していくにあたって参考にしている ものは、主として、悪露の量・質・気味、発熱の有無・疼痛の有無・排尿 の状態・排便の状態・乳房や乳汁の状態などです。これらを舌象や脉象と 結びつけて弁証していくわけです。

たとえば、悪露の量が多く穢臭があり、下腹部に疼痛があって拒按、 発熱があり、舌は紅で苔は黄、脉状が洪数のものの多くは、熱毒が直接子 宮を侵し、衝脉・任脉が損傷されているものであると考えます。悪露の量 が少なくいつまでたってもすっきりせず、その色が紫黒色で、小さな血塊 があり、下腹部に疼痛があって拒按のものの多くは、瘀血が停滞 していると考えます。悪露の色が薄くその質が清稀なものの多くは、気血 が不足しているものであると考えます。産後、乳汁の分泌が少なく、乳房 が脹って痛み、脇肋部が脹っているものの多くは、肝気の郁滞であると考 えます。乳房が軟らかく、脹痛がなく、乳汁の分泌量が少なくて清稀なも のの多くは、気血が虚弱なためであると考えます。乳房が紅く脹れて熱感 があり痛むものは、乳腺炎であると考えます。排尿困難があるものの多く は、膀胱の気化が不足しているか、出産時の外傷によるものであると考え ます。









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