第十六章 仲景傷寒方論の弁
第三節 治療法則




このような誤りは世の中には非常に多いものです。腹内に滞っている塊があることを見つけるとすべて積と呼んでいますけれども、痞・痃癖・五積・六聚・七癥・八瘕の弁別がありますので、一概に積とだけ呼ぶべきではありません。この積聚・癥瘕・痞・痃癖の詳しい弁別は、虞天民の《医学正伝・第三十九或問》で述べられています。また、腰腹鳴痛・手足の拘急疼痛・大便不調などの諸症やその外の名状しにくい病をみると、世人はすべて疝気と呼んでいます。《内経》には、病を治療するものは、先ずその病因を極め、次に病名を正し、その後に治療を行うことを法としています。けれども今の庸医は、病因を明らかにせず、病名を正さずに、尋常稀なる病に逢うと、いっこうにその病因や病名を理解できず、心はもうろうとしたまま薬を施しています。実に嘆かわしいことです。



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