右背部痛の弁証論治


右背部痛の弁証論治
病因病理:弁証論治



この方は常に肝気をはって生活しているという印象がある。つまり、肝気鬱結を 起こしやすいタイプと思われる。






この傾向は、子どもの頃からあったのではないか。肝鬱が火に化し、耳に集まり、

3、4歳から中耳炎を起こしている。破壊された右耳は修復過程に入っても、再度 肝鬱火化が起こり、弱った右耳をまたも破壊するため、慢性化することとなった。

23、4歳で会社に行き始めるが、かなり忙しかったらしく無理をして働いた (会社に何日も泊まったりなど)肝気をはり腎気も損傷するが、若いためこの頃 はそれほど問題は起きていない。

26歳で独立し、夜間の学校にも行き始めた。この頃、主訴である右肩甲骨の痛み が起きた。仕事の内容から常に同じ姿勢でいて右手を使うため気滞が生じ、はじ めは使い病みだったと思われる。鍼で局所の治療をし、そのときはいいがまた同 じ場所に疲労がたまり痛みが起きた。肉体的、精神的に無理をしたため、肝鬱に より腎気も少しずつ損傷されていく。

35歳になり、背中のこわばりや肩凝りを感じ始めた。疲労の部位が広がっている。 これは、しだいに肝鬱のために腎気が損傷され生命力が落ち、気の偏在が広がっ たためと思われる。

また、肝鬱火化を繰り返したため、慢性化している中耳炎が悪化し、耳から出血 し手術を受けた。

肝鬱と腎気損傷の悪循環の影響で脾気も傷られ、消化機能が落ち内湿がたまるよ うになり30代になるとタンがでるようになった。タバコや度重なる肝鬱からの肺 気損傷に加えて、内湿の蓄積で39歳の時は喘息が起き始めた。

また、しだいに脾虚が進み37、8歳では便秘となった。薬を飲まないといられ なかったが、便秘薬はさらに脾気を損傷することになった。






38歳のときには、退職による夫の気分の落ち込みで気を使ったこと、また家計 のため仕事やアルバイトを増やしたことによって、またしても肝気をはり、腎気 を損傷した。この時の肝鬱で食欲は落ち(肝気犯脾)体重は10kg減ってしま った。体重はその後変わらず維持されている。

40歳になると、これまでの肝鬱、腎気損傷、脾気損傷により、だるい(内湿、 気滞、腎虚)という症状が出てきた。また、肝鬱火化は弱った耳が手術で治療さ れたせいか、中耳炎とはならなかったが今度はめまいをおこすようになった。肝 風内動も起き、ふらつきもあらわれた。腎虚による眼の疲れも出てきた。排尿関 係の異常がこの頃から目立つようになってきた。つまり、脾虚から腎の排泄機能 にも影響を及ぼし始めた。このためますます内湿がたまりやすくなってきて、4 1歳になると膝から下のむくみを感じ始めた。

40歳の時の仕事もかなり忙しく、追い詰められる感じだったり、もめたりした。 この時の肝鬱はまた火に化し、今回は排泄機能の弱りから気滞が生じていた直腸 に痔ろうを生じさせた。 痔ろうの手術後、便秘が良くなったのは、滞りが解消されたためと思われる。 ただし、食後にお腹が張ったり胸焼けがしたりする、食べ過ぎると直後に吐くな ど、脾虚は改善されずにいる。

41歳暮れ、出向の仕事を始めたが、人間関係でかなりストレスを感じた。同時 期に、実母の介護や死亡、家族間のごたごたなどが重なり、肝鬱がひどかった。 肝火上炎でめまいもいっそう激しくなった。肝鬱と肉体疲労によりさらに腎気を 損傷したため、内湿が排泄されず、喘息もひどくなりステロイドを処方されるほ どになった。

数年前から生理の2,3日前になると寝汗がだくだく出るようになった。生理前は 肝鬱の時期なので、腎気を損傷しやすくなる。この時期に陰虚が出てくるように なったということは、腎の器が壊れ始めた可能性がある。






腎虚であることから、腎陽も不足しており、身体を守る衛気不足で風邪をひき やすくなっている。また、腎陽不足により脾の陽気もバックアップをなくし消化 機能が回復できずにいる。

まず、腎気を起て器の充実をはかる。その上で陽気を起て脾肺をバックアップ。 風邪があれば抜くようにし、内湿の排泄を目指す。現在は肝虚状態だが、肝鬱が あると腎気を破りやすいので、肝鬱がある場合は理気も考える必要がある。ただ し、理気をする場合は全体のバランスを崩してしまう恐れがあるので、慎重にし なければいけない。

この方にとっては、充分な休息によって再離陸できるかどうか、してもよいの かどうか、腎気の回復状況を見ながら観察する必要がある。身体のために器に合 った生活に軟着陸するという選択肢も考慮に入れ、自身の身体に対する自覚と生 活設計の見直しを考える時期が来ているとも言える。






弁証:腎虚、肝鬱

論治:補腎、必要が生じれば理気








主訴:問診

時系列の問診

四診

五臓の弁別

病因病理:弁証論治











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