主訴はきつい冷えと不妊(継続しない)である。
子供の頃から常に冷えているということ、気がつくと足の先太ももお尻と広範囲で冷えており、朝は寒さで動けないやる気がでないというほどである。このことより元々の素体として腎の陽気不足があったのではないかと思われる。また、朝は寒さで動けないという訴えが想像できないほどご本人が利発でしっかりと目を見開いてお話しをされていることから、肝気は常にしっかりと張っているタイプではないかと思われる。
生理も初経は13歳ながら、働き始めた20代から不調になっており内膜の薄さ、高温期の短さからドクターから妊娠の希望時には治療が必要である可能性が指摘されている。腎気そのものはそれなりの成長をとげているが、陽気が不足がちであり、なんらかの負担があれば余力である生殖器系を滋養できなくなりがちであることがうかがわれる。しかしながら突然に症状が消失し生理が復活。その後、継続的に生理はきていることから、腎気そのものの虚損が中心ではなく、なんらかの原因で肝鬱が強くなり症状が生じた可能性がうかがわれる。
20代の後半の激務によって頸椎湾症候群が発症。背中から薬指までしびれがでる。腎気が不足気味であったため、強く肝気をはって激務をこなすこととなった。このためきつい肝鬱気滞が生じ症状が発症したものと思われる。湿布と10分ほど局所に置鍼するという鍼灸で発症から2年ほどで完治といえる状態になったことより、非常に強い症状であったが、症状の中心は肝鬱により生じた気滞であり、肝鬱気滞の解消によって症状は消失した可能性がうかがわれる。しかしながらこの激務によって腎気により負担がかかったため、30代からは寝つきが悪くなり、眠りが浅くなっている。症状の中心は肝鬱気滞であったが、強い肝鬱気滞は腎気にも負担となり、腎気が落ち肝気がより立ちやすく納まりにくくなってしまったのではないかと思われる。
食後2時間すると異常に眠くなるということだが、食欲もあり便通もよいことから、脾胃そのものはご自身の節制もあり良い状態を保っていると思われる。異常に眠たかった後は逆に目がランランする。また、激務となれば首肩をしっかりと凝らして仕事をこなす。何か一つの事があれば、非常に強い気の集中がみられる。そして切診の肺兪の陥凹、列缺のこそげ舌の色褪淡白歯痕戦、遅脉結代などからは全身的な気虚がうかがわれ、気虚があり器が小さいために気の動きが激しく集まりやすく動きにくくなりがちになり、強い肝鬱を生じさせるのではないかと思われる。
30代から妊娠を希望し、妊娠はするが早い段階での化学流産となり継続できていない。 外関陽池の冷え、腎兪の亀裂、非常にきつい冷えなど陽気不足を中心とした腎虚は明瞭である。現時点で脾胃の問題は問診上明瞭ではないが、足三里脾兪公孫と弱りが見受けられ、脾募もあり、天候によってで首の痛みがでていることから内湿の存在が見受けられる。これは腎陽のバックアップが不足しているため内湿が生じやすくなっているのではないかと思われる。また腎の陽気不足のため女子胞を温養することができず、妊娠するものの継続が難しくなっているのではないかと思われる。
弁証:腎の陽虚 気虚肝鬱
論治:温養補腎 疏肝理気
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