頭頸部の痛みの弁証論治


頭頸部の痛みの弁証論治
病因病理:弁証論治






主訴である頚部の痛みは高校時代に部活動で傷めたが、首の筋トレなどを行ったことにより、その後の日常生活では違和感を覚える程度で特に痛みとしての自覚は、専門学校卒業あたりまでなかった。また、首を痛めたのと同じ頃から、お天気の変化とともに時々偏頭痛が起こり始める。これは首を痛めたことにより、少陽経を損傷したと考えられ、そのために少陽経の経絡経筋の走行である側頭部に頭痛が起こったと思われる。

偏頭痛が雨天時に起こるというのは、この患者さんの脾気と関係があると考える。もともと子供の頃から便秘がちで3~4日に1回の排便ということから、脾の内湿排泄機能が弱いことが窺える。つまり、雨という外湿が、脾の運化不足によって生じた内湿と呼応することによって、内湿の状況が増強されて脾虚内湿の症状が強く出てきたために、普段よりも強く患者さん自身の生命力に影響を与え、それを低下させた。そのために普段は自覚しない少陽経の痛みが、雨が降ることにより頭痛という症状として現れていたと考えられる。

ちなみに、患者さんの言う「晴天から急な雨への変化」により起こる頭痛というのは、急激な雨天への変化により、その変化への身体の対応がもともとの脾虚内湿ために遅れて、湿邪の内外呼応により生命力の損傷が起こり、頭痛を惹起させるが、雨であれ天候の変化が安定すると、元来の生命力による自己修復力が働いて頭痛も治まっていたと考える。








その後、大学に入ってからの部活動で、頭頸部に衝撃を受けた日の夜に、頭が割れるような痛みを自覚している。これは、治り切っていない少陽経への物理的な衝撃により、一時的に損傷がひどくなり、その損傷を自分自身で回復させようとしたことによる痛みであったと考える。また、大学卒業近くには、夜遅くまでお酒を飲む機会が増え、にわかに頭痛の回数も増している。これは、夜更かしや暴飲暴食により脾腎を損傷し、生命力を内から損傷することとなり、それによって古傷が痛むように偏頭痛が起こったと考える。これらのことから、本人の自覚は無かったが、頸部の損傷は完治することなく潜伏し続け、内的、外的要因により常に影響を受けていたことが窺える。

就職してからは忙しく、肉体的、精神的にもハードで梅雨の時期に頭痛がするようになる。これは生活が不規則となり、脾腎の損傷を一段強めたために、脾気の弱る梅雨の時期に頭痛が多発するようになったと考える。しかし、この段階では、まだもともとの腎器がしっかりしているおかげで、梅雨時期以外は脾気の弱さを腎気が補って、特に体調を大きく崩すことなく過ごしていたが、偏頭痛の回数が増え、確実に脾腎は損傷され続けていたと思われる。

専門学校に入学し、午前中は授業、夕方から深夜まで仕事という生活が続き、また脂っこいラーメンを食べることが多くなり、脾腎の損傷を大きくすることとなる。これまでは、脾気の損傷をなんとか腎気が補って過ごしてこれたが、眠りが浅かったり、寝起きが悪かったり、翌朝疲れが残るなど、学年があがるにつれて、確実に腎気の損傷が深くなっていることが窺える。

また、3年次には運動の後に頭頚部の痛みが起こるようになる。これは今までと同じ運動量であっても、腎気の損傷があるため運動後の疲労が大きく、そのためスポーツの後に一時的に大きな生命力の損傷が起こり、それにより頭頚部の痛みが起こったと考える。








国試前には仕事を辞めると同時にトレーニングもしなくなるため、ストレスからくる肝鬱を発散する機会が減り、この肝鬱がさらに脾腎を損傷することとなる。この頃には脂っこいラーメンを食べると側頭部の血管が絞まる感じがしたり、翌日下痢をしたり、深酒をして下痢をしたりと脾虚症状が強くみられるようになり、また気分の浮き沈みが激しくなったりと肝鬱も強くなり、そのことが一層便通を悪くして、内湿を蓄積し、脾腎の損傷を増長させるという悪循環を引き起こし始める。もともと便通が悪くて内湿が排泄されにくいにもかかわらず、食生活の不節制により、一層脾気を低下させ、体重も徐々に増加することとなる。この頃には、食生活による脾器への直接のダメージが偏頭痛以外の症状としても現れるようになり、脾器の損傷の大きさが窺える。

卒業後には、運動後の頭頸部痛みがしっかりと自覚されるようになり、それに加えて運動後に熱中症様の症状が出るようになったり、疲労時には頭頸部の痛みが頻発するようになったことからも、腎気の損傷が進んだからと思われる。

また、現在の職場に移ったことにより、新しい職場での慣れないことによるストレスからの肝鬱も強いように思われ、また飲酒の機会も多いようで、さらに脾腎を傷めて内湿を蓄積し、7月になり雨の日が多くなると、さらに頭頚部の痛みが強まり、痛みでよく眠れない日が多くなることとなる。








以上のように、この患者さんの頭頸部の痛みは、スポーツにより頸部を傷めたことがきっかけとなり、それが治らずにいたところへ、自分自身の生活習慣により脾虚を強め、それが腎気の損傷にまで波及し、現在の頭頸部の痛みの頻発とともに、睡眠障害、だるさ、頭がすっきりしないなど、経絡経筋の問題のみならず、内傷の問題と結びつきを強めつつあると思われる。頸部を痛めるとしっかりと治療しない限り、常時付加のかかっている場処であるためなかなか治りきらないことが多く、この段階で、治療をし、きちんと患者さん自身が養生して、痺証になるのを防ぐことが大事であると考える。 日常生活において、大食、多量飲酒、早食いであったりと、自分自身で脾を傷めていると思われる部分が多く、もともとの脾器、腎器はしっかりしているタイプであると推察する。日常生活で節制をして脾腎を養うように心掛ける必要があると考える。








弁証:少陽経の経絡経筋病、及び、脾虚

論治:疏通少陽経絡、健脾







主訴:問診

時系列の問診

四診

五臓の弁別

病因病理:弁証論治











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