身体の痛み 不眠の弁証論治


身体の痛み 不眠の弁証論治
病因病理:弁証論治




この患者さんは、ご本人の自覚があるように10代の頃から胃腸が弱く、食べ過ぎると体調を崩し、風邪でも胃腸にくるという、もともとの脾器が小さい方である。

そして徐々に体調を崩す最初のきっかけとなったのが、3年前の3番目の子供の流産で、病院で処置をしてもらい、その後生理も順調に来ており、この流産(稽留流産)、処置自体は問題無かったようである。

しかし流産という心身の疲労をした後も、まだ小さい2人の子供の世話など忙しく生活をしており、膀胱炎のような症状や生理痛のような腹痛が起こるという腎虚の症状が現れる。

それから半年程して、腰や股関節前面が痛くなったり、胃の調子もおかしくなって検査を受けたりと、腎気の消耗が続いていることに加え、素体的に丈夫ではない脾気の損傷も起こり始めていることが窺える。

このような状態のまま、ご主人の転勤で大阪に移るが、大阪での生活になかなかなじめず、慣れない生活に肝気を張っていたことが予想され、腎気をさらに損傷していったと思われる。

そのような慣れない生活を続けつつ10ヶ月ほどが過ぎた11月に原因不明の微熱が出るようになる。この頃から時々眠れないことがあり、翌月には肩こりを強く感じてマッサージやカイロに2ヶ月ほど通うこととなるが、ほとんど改善は見られない。この微熱に続き、肩こり、マッサージなどでの改善が無いこと、またこの冬は今までに無く寒く感じるようになっていることから、風邪をひいてそれがなかなか抜けなかったためではないかと考えられる。そのため、風邪を追い出そうと腎気の損傷、特に陽気の消耗が進んだと考えられる。そのことは春になって温かくなると肩こりが軽くなり気分が楽になっていることからも窺える。

その後7月に左奥上歯の治療で抜歯しても痛みが治まらず、骨が溶けてなくなったのを補う手術をし、その時には右顎関節の痛みも覚えるようになる。そして今まで夏に夏ばてで食欲をなくしたことがなかったのに、歯の痛みがあるために食欲が湧かず、徐々に体重が減り始める。

この歯の治療において、抜歯の後の続く痛みははっきりと原因が分からず歯医者を変えたりするなど、すっきりと治らなかった経緯があり、現在まで治療を続けることとなる。これは上歯、顎関節という経絡的に見て胃陰不足による胃熱のために起こっていると考えられる。もともと脾胃が弱いことに加え、ずっと続く腎気の虚損、時々不眠が起こりだしていることからも肝腎の陰虚も起こっているといえ、それが胃の陰虚、虚熱の発生へと繋がっていったと思われる。

この年の暮れには、大阪から横浜に転居となり、引越しでばたばたと忙しくし、さらに腎気を損傷していく。また冬となって陽気のたちが悪くなり、深く損傷した腎気、陽気のために肩、背中、腋を始め、体中が痛むという現在の症状となる。

これらの症状は腎気の損傷、脾気の損傷が進んだために起こったと考えるが、一昨年の秋の微熱に始まり、冬の度に症状が出ていること、身体のこり、痛みに加え、時々関節がこわばることがあることなどを考えると、痺証の始まりの可能性とも考えられる。







【弁証】腎虚、脾虚、風邪の内陥の可能性

【論理】補腎、健脾、場合によっては風邪の治療







<治療方針>

まず落ち込みの深い腎虚の建て直しを図る。そのために必要ならば脾気の治療も加えて、全体的は底上げを行う。それにより内陥している風邪が浮いてくればその治療も行い、痺証への進行を食い止める。







<生活提言>

今は身体の痛みで身の置き所が無く、どうすれば良くなるのか分からない状態のために、「もっと食べたほうがいい」「筋肉をつける運動をした方がいい」などの周りの気遣いの言葉を受け入れて、いろいろと試そうとしていますが、この行為自体がさらに身体の力を損なうこととなります。これらの言葉に振り回されること無く、今は養生をするのが1番の選択となります。

食事は、空腹を感じないなら無理に1日3食、いっぱい食べる必要はありません。

運動はやり方によっては身体をさらに壊します。今はまだされないほうがいいでしょう。







主訴:問診

時系列の問診

切診

五臓の弁別

病因病理:弁証論治











一元流
しゃんてぃ治療院