3年前劇的に環境が変化して、徐々にノイローゼ気味になり、精神科を受診した時期があった。なかなか新しい生活に馴染めなかったようで、心身の疲労、特に精神的な偏り疲労が大きく、肝鬱腎虚が徐々に進んでいたのではないかと考える。
ただ、もともと精神的ショックがすぐに体調に影響していたことを考えると、肝の根が脆弱で大きく影響を受けやすい、つまり腎器の小ささがもともとあるのではないかと思われる。
器を徐々に小さくしていく気陰両虚の状態の中で、ある日、一時的に睡眠時に気が裏に帰したことによって気の薄い部分が生じて血の気が引き、痙攣のような症状が出たのではないのかと考える。
この日以降、首や体を動かすとふわっとするめまいが起こるようになり、いくつかの病院で検査を受けるもはっきりとした原因は不明で、首肩をストレッチするようなリハビリを受けたが、その後返って気持ち悪くなった。これは、器を小さくしていく中で痙攣が起こったことをきっかけに、内風が納まらず、めまいとして続いていると思われる。つまり、器を小さくしつつも陰陽のバランスが取れていたものが、痙攣をきっかけにバランスを崩し、そのまま回復できないでいると考える。内風のめまいのため、上焦の気を大きく動かすような動作やマッサージをすると症状がひどくなるものと思われる。
内風は肝血虚がベースであるが、その裏には根の弱さとしての腎陰虚があり、その影響が動悸として心血にまで及んでいる。また本人の自覚としては、陽虚の症状も多くあり、全体的に器はかなり小さくなっていることが窺える。
雨の前には、首がぐうっと硬くなるようなこり感を感じるということで、これは脾気の弱さがあると考えられる。しかし、お通じもよく、甘いものの間食もほとんどせず、ご飯もお茶碗に軽く一杯にしており、食事には気をつけているとのことから、脾の養生になっているものと思われる。
最近では短時間なら一人で外出できるようになり、動悸もだいぶん落ち着いてきているようで、少しずつではあるが自己回復をしていると思われる。ただ、本人も言うように風邪をよく引くようで、初診の際の経穴状態からも風邪を引いていることが窺え、これは風邪に抗する陽気の無さのためでもあるが、風邪を長引かせたり、重ねて引くことが、さらに陽気の消耗を招くので、風邪の治療を同時にしていく必要がある。
弁証:腎虚、風邪
論治:補腎、風邪の治療
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