下焦精蔵 第十三節 十月留胎




男子の一滴の精液が女子の子宮の中に入ると、何がその精を十月の間止め養い、胎を成育させるのでしょうか。男の精が子宮に入ると、女子の経血はすぐ止まって、その精胎を養います。ですから経血が止まっている間は、交接しても妊娠することはありません。胚胎を子宮に止めて養育するための供俸(きょうほう)〔訳注:不自由がないように供給する物資〕がないためです。

女子は十四歳で経水が起こり妊娠することができます。妊娠すると経水が止まります。もし妊娠中に経水が出る時は胎が敗けたためです。

妊娠の十月の間に経水が下ることがあってもその胎に(わずら)いがない場合、その理由はその婦人の天稟(てんぴん)〔訳注:先天的な素質〕において、血分が有余している体質であり、精胎を養いながらまだ泄らすことができる余血があるためです。甚だしい場合は月ごとに経行して、妊娠していない時のままのものもあります。これを名付けて盛胎と言います。日本では畜生腹と呼びます。これもまた婦人の血が非常に充実していて盛なものです。ですから漏血していても胎を養うのには充分なので胎を損なうことにはならず、母にもまた患いがないわけです。



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