第六章 三百六十五穴の論




門人が聞いて言いました。《素問・気穴論》に『孫絡の三百六十五穴会もまた一年に応じています』と述べられています。今滑氏の《十四経発揮》に上げられている穴を数えてみると三百五十四穴あり、《内経》の穴数より十一穴不足していますが、どうしてなのでしょうか。

答えて言いました。《十四経発揮》には漏れている穴が二穴あります。肝経の急脉と督脉の中枢穴です。これを合わせると三百五十六穴で、実は九穴不足しているということになります。

そもそも《内経》に伝えられていることは久遠なため〔訳注:非常に古いものであるため〕、穴輸が失われています。

上歯の齦基(ぎんき)〔訳注:歯ぐき〕に督脉の齦交穴の一穴がありながら、下歯の齦基には今は穴がありません。けれども《素問・骨空論》では髓空を挙げて『一つは齦基の下に位置します』と述べています。骨空は下歯の齦基の下に位置しているという意味です。諸々の輸穴はすべて骨空にあるものです。下歯の齦基の下に骨空があると述べられているからには、古には下歯の齦基にも兪穴があったのでしょう。

また足の少陰腎経の陰谷から小腹に上る間の股内(こない)後廉(こうれん)を行くところに今は兪穴がありません。けれども《霊枢・寒熱病篇》に『骨が寒熱するものは病んで安んずるところがなく、汗が注いで休みなく、歯末が槁れます。その少陰の股内の絡に取ります』と述べられています。これは、股内の足の少陰腎経の絡穴に鍼をするということです。この註釈には、股内の絡は大鐘穴とされています。けれども大鐘は内踝の後ろに位置しており、股内の穴ではありませんので、この穴をあてるのには無理があります。思うに、往古には股内に腎経の絡穴があって、後世これを失ってしまったのでしょう。

これらのことを考えると、古には三百六十五穴あり、今数えてみると九穴不足していることも理解できます。【原注:肝経の急脉穴は、《十四経発揮》の諸鈔で述べられていますので、贅述しません】



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