股関節痛の弁証論治


股関節痛の弁証論治
病因病理:弁証論治






この方は小さい頃から皮膚が弱くアレルギー体質であるということから、皮膚を養 うべき脾胃の器が小さいのではないかということが伺える。また現在も風邪を引き やすいなど、脾肺の虚弱を素体として持つと思われる。腎の器を育てるのに必要な 脾胃の器が小さいため、腎の器も充分育つことができなかったと思われる。

また腎の器を育てる時期に小児結核を患ったため闘病により腎気を使い、皮膚を養 う脾気を補うべき腎気がさらに損なわれたため、乾癬のような発疹ができた。ただ し、この時長く治らなかった発疹は、薬がピタッと効いて治ったとのことである が、まだ成長期のできごとであるため、腎気がそれなりに回復し、それによって皮 膚を養う脾気も回復してきた時期と重なった可能性がある。

それなりに腎気は回復してきたが、蚊に刺されたときすごく腫れるなど皮膚の過敏 がある(心に熱を持ちやすい)ことから、腎気は充分に回復せず弱いままであった 可能性がある。20歳の時大きな魚の目を切除しているが、経絡的には腎経に近いの で、このことからも腎気の回復が充分でなかった、腎の器が充分成長できなかった と考えることができる。







学生時代は特に大きな症状は出ていないが、これはこの時の負担が充分に成長でき なかった器でも対処できるものであったのであろう。

就職して、心身にかかる負担が本人の器を越えるものとなったとき、いろいろな症 状が出始めることとなった。

就職して最初の1ヶ月で、人間関係のストレスにより肝気鬱結(以下「肝鬱」と表 記)となり脾気が落ちたため体重が5キロ減少した。

また、仕事の精神的疲労によっても肝鬱がおき、風邪や疲労のときなどたまに偏頭 痛が起きるようになった。

陰陽ともに小さいため、気虚であり陰虚であるが、肝欝により気滞が起きると、気 の偏在が起き、25歳以前に生理が2週間以上止まらないという現象を起こした。こ の頃、右ひざがポキポキ鳴るという状況になるが、局所を傷めた覚えもないため、 局所の問題というよりは、脾気の弱りまたは肝鬱による気滞ではないかと思われ る。

後に(30代後半か40歳)右ひざに痛みが出るが、この時もきっかけはなくある日突 然痛み出した。医者では自律神経と言われ、半年かかって治った。これも脾気の弱 りまたは肝鬱による気滞ではないかと思われる。

これに対して27,8歳のスポーツで腰痛は、原因があるため局所の問題であったと 思われる。ただし、この時はすぐに回復しているが、器が小さいため、場合によっ ては発症を繰り返す可能性はあるので、注意が必要である。

肝鬱や仕事による眼の疲れで、もともと弱い腎気を損傷した。冷え症で夏でも靴下 を履いて寝るということ、また、スキーに行くとブーツの中で足がつるということ から、血虚かつ腎陰陽両虚が起きているのではないかということも考えられる。こ の「足がよくつる」という状態は現在まで引き続き起こっている。







34歳の時、退社による引継ぎで3ヶ月忙しかった。肝鬱により再び腎気を損傷し た。腎気不足は相対的に心に熱を持ち地下や閉所を苦手と感じ始めた。30代後半か 40歳(右ひざの痛みが出た頃)には閉所恐怖症気味となり、パニック傾向となっ た。このパニック傾向を肝鬱火化と考えると、当時の膝の痛みも脾気の弱りという よりは、肝鬱による気滞と考えられる。閉所恐怖症は減りつつあるが現在も時々あ るので、心熱を持ちやすい傾向はまだ続いていると思われる。また、42歳の時不整 脈が出ているが、これも腎気不足による心熱と思われる。

31歳のとき、風邪を引いて喉が痛くなり、治ったあとに尋常性乾癬発症。顔には出 ないが全身に出た。尋常性乾癬は腎虚が元で、皮膚を養う脾が虚したため起きる。

肝鬱により気が上衝しやすいため、生命力が集まっている顔には出ないと思われ る。このときはステロイドの塗り薬を塗って3ヶ月でいきなり治った。これは風邪 によって弱った腎気が3ヶ月かかって次第に回復してきたためと思われる。この後 も、尋常性乾癬が出たときは、薬を塗りながら3ヶ月経つといつも治る。これは、 尋常性乾癬が出てしまうほど弱ってしまった腎気が3ヶ月経つと脾気を養えるほど に回復できるためと思われる。

34歳の時の2回目の尋常性乾癬発症において、1回目の80%で程度で身体と手足 に出ているが、40歳の時の3回目では1回目の60%であまり上半身には出ず、 足がひどかった。そして、42歳の時は最初の30%で手足だけに出ている。だん だん症状の出る範囲が狭くなってきているが、体幹に出なくなったということは、 腎虚がそれほどひどくなくなってきていると言える。31歳の時(初めて尋常性乾癬 が出たとき)が肉体的にも精神的にも疲労のピークであったと思われる。その後た びたび腎気を損傷するような出来事(ひどい風邪、精神的ストレス、仕事の疲労な ど)にぶつかりながらも少しずつ回復し、弱いながらも生命力が徐々に充実してき たために症状が軽くなってきているのではないか。







腎気不足による心熱を持ちやすい状況で、40歳の時閉所恐怖症となったり、42歳の 時不整脈が起きた。

41歳の時、悩み事で肝鬱となり、肝気犯胃で胃の痛みが生じた。この後から風邪っ ぽいときに胃の痛みが生じるようになった(風邪による気滞が起きると、気の偏在 が以前より顕著になり、脾の部分の気虚が起きやすくなった。このため葛根湯によ り脾気をたてると胃痛も風邪も治まってくる。この方の場合、乾癬は、冬の乾燥し た時期に肘と膝から下に出る。乾燥した時期は脾気が元気である時期だが、この時 期に起きるということは、胃の陰虚傾向を持っている可能性がある。陰虚により虚 熱が発生しやすく、これがなお胃の痛みを引き起こす原因となっていると考えられ る。問診を行う少し前に風邪で唇二倍に腫れたことがあったらしいが、これは陰虚 熱が上衝して唇にあらわれたものと思われる)

42歳の時生理が止まってしまった(精神的な原因らしいので、肝鬱による気滞が生 じ、脾気や腎気が虚してしまった)







このように40歳を過ぎたあたりから、いろいろな症状が起き始めているが、年齢に よるゆるやかな腎気の損傷は免れないとしても、仕事の疲労や精神的疲労がかなり あったと思われ、腎気を損傷したと思われる。

ただし、損傷しているとしても、パニックや不整脈は自然に減少しているし、生理 も止まることはあっても病院にいかなくても自然に始まるし(ここ半年は順調)こ こ1年はひどい乾癬はでなかったり、5年前から両足にあった魚の目は、腎経もしく は胃経の弱りから起きた可能性があるが、何度スピール膏をはっても治らなかった ものが、今年自然に治ったとのことなどを考え合わせると以前に比べて生命力 (腎)はだいぶ充実していると考えられる。

しかし、素体が弱いため、どうしても肉体的疲労や精神的疲労によって腎気や脾気 を損傷しやすい。

主訴が起きる2,3日前に足の裏が痛くなることがあったり(腎経)、3ヶ月前右外く るぶしと足の裏が痛くなったり(膀胱経)今も歩くと右足の裏第1趾の付け根辺り に痛みがあったり(脾胃)特に気になる命門の反応(冷え、硬い、狭い)や左三焦 兪の反応(凹みの奥に硬結、冷え)左天枢(冷え)の反応などから、脾腎がかなり 弱っているのではないかと思われる。

主訴は左大腿内側付け根で、脾経、肝経あたりであることから、海外旅行でいきな り平泳ぎをして疲れ肝に気滞が生じていたこと、これにより脾気の弱りがさらに顕 著になったことが原因ではないかと思われる。そして、この原因によって経絡の阻 滞あるいは虚による不通(経絡経筋病)が起きている可能性も考えられる。







まず、損傷している腎気や脾気を回復させることが第一であろう。

きっかけは生活の変化によるものであったがいまだに便秘傾向であること、足がよ くつること、ひどい冷え症であること、まだ閉所恐怖症気味であることなど、続い ている症状があるが、損傷した腎気や脾気を回復させた後は、徐々に充実しつつあ る生命力を助けるように、腎気や脾気をたてていけば、全体的な状態は好転して行 くと思われる。

そして、全体的な状態を整えるとともに、経絡経筋の状態によっては、そこに虚が 生じていれば、こちらも整えて行く必要がある。







弁証:腎虚、脾虚、経絡経筋病

論治:補腎、補脾、必要なら肝経、脾経の補







主訴:問診

時系列の問診

四診

五臓の弁別

病因病理:弁証論治











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