偏頭痛・生理不順の弁証論治


偏頭痛・生理不順の弁証論治
病因病理:弁証論治




この患者さんの幼少期は、食が細く、排便も数日置き、また便意があってトイレに行ってもなかなか排便できず苦しんだことなどから、脾器が小さかったことが窺える。

中学以降は食時量も人並みとなり、大便も毎日出るわけではないが排泄に苦しむことはなくなったことから、学年が進むにつれ、脾器は小さいながらもバランスを崩すことなく成長していったと考える。

ただ、旅行では決まって朝に気持ち悪さを感じていたところをみると、旅行という外泊するイベントは、この患者さんにとって身体への負荷が大きく、脾気の一時的な落ち込みを表していたと考える。

その後、成長とともに腎気も充実していき、14歳で初経を迎える。

高校生になり、母親が朝食として菓子パンを買ってくるようになる。このことは脾器の大きくないこの患者さんにとって、高校、短大と胃痛薬を服用していたことからも、確実に脾気を傷めていたと思われる。







就職してからは仕事時間が夜勤があったり不規則で、睡眠時間が平均的に短くなり、しばらくすると偏頭痛、目の疲れ、首肩の凝りを自覚するようになる。これは腎気を徐々に損傷していき、気の上衝が起こりやすくなったものと考える。特に偏頭痛は、お風呂に入って温まると悪化することからも、腎の収斂が不足しているところに、お風呂で余計に気が上衝していることが窺える。

また、腎と相互扶助関係にある脾は、仕事を始めてからの食事の時間の不規則さや夜遅くの夕食、引き続いての菓子パンの摂取、3日に1回の便通、経穴の状態などを考えると、素体としての器の小ささもあり、脾気も充実しているとは言い難い。







一方で、この患者さんはとてもよく気がついててきぱきと働くタイプで、前々回の職場や今の職場でも、人間関係において苛立ちを感じることも多くあるようで、「主訴の症状の原因は疲労やストレスのような気がする」と本人が言っているように、肝気を張って肝鬱状態になることが多々あると推察される。

この肝気を張る状態は、素体の脾器の小ささ、腎気の弱りをカバーするために、この患者さんにとっては日常的なことであるとも思われ、そのために常に腎気を消耗し続けていることが考えられる。これは、普段聞いていた以上に体調が悪いことがあることと、そのことに対する自身の自覚の薄さなどからも肝気を張っていることが窺える。







腎気の弱さは、日頃からの肝鬱に加え、肉体的な疲労の蓄積により就職後から症状として著明に現れているが、普通は遅くとも20歳前後から安定するであろう生理周期がずっと乱れていることを考慮すると、脾器のみでなく腎器も小さい可能性が考えられる。疲れたときや風邪を引いたときに経血量が多くなるのも、疲労や風邪で腎気が損傷されるためである。

このように脾腎という元来の中心の弱さ、加えて日常的な肝気の張りにより、さらに中心が弱くなり、余計に気が上衝して偏頭痛や目首肩の凝りを発症しやすくなるという悪循環を起こしているのが現状であると考える。







治療指針:

今現在は、肝気を張る状態ではあるが、仕事のほうも少し落ち着いてきており、肝鬱がそれほど激しいとは思えないことから、疏肝よりも脾腎の裏を建てることを治療の中心とし、まずは偏頭痛を起こりにくくし、そして徐々に生理周期が整うことを目標としていきたい。







弁証:脾虚、腎虚

論治:健脾、補腎







主訴:問診

時系列の問診

切診

五臓の弁別

病因病理:弁証論治











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