治療指針:生活提言


不正出血、二人目不妊の弁証論治
病因病理:弁証論治




病因病理



20歳代前半で会社勤めを始めてから結婚して専業主婦になるまでの約10年間は、平日はお通じが無く、週末に便秘薬で排泄することが続いていたことから、脾気が弱く、肝鬱の影響が大きいことが窺える。また、現在まで続く動悸(不整脈)が社会人になってから現れているが、この動悸は本人も自覚するように精神的なストレスと連動していることが多く、肝鬱による動悸であると考えられ、この患者さんにとって会社勤めはかなりストレスが多かったものと思われる。ただこの頃は睡眠には問題が無く、肝鬱は強かったが、腎気にまで影響を及ぼすほどのものではなかったと思われる。

30歳で結婚して、第一子を出産する。ただこの子供が病弱なため、かなりの注意を払いながら育児をしていたようで、ご主人が仕事が忙しかったこともあり、一人で精神的にも肉体的にも無理をして過ごしていた。そして1年を過ぎた頃、体調を崩し、心療内科に掛かり始めることとなった。

これは、出産で損傷した腎気を回復する間もなく、育児や家事に追われて、肝気を張って生活を送っていたので、腎気の虚損が更に大きくなり、出産後1年経って本人は気が弛んだと言っているが、気を張ることもできないくらいに腎虚が進んだために、不安神経症など精神的な症状を引き起こすようになったと考える。この頃から不眠で薬を飲んでなんとか眠るような状態になり、同時にひどい目眩も起こっていることからも、特に腎陰虚が深くなり、内風が頻発していたものと思われ、腎器が一段小さくなったと考えられる。またこの頃は食欲も無く、もともと脾虚気味であったが、更に脾虚も大きくなっていたと思われる。







この後、2年ほど経ち、相変わらず子供のことは一番の心配事ではあるものの、順調に育っており、それに伴い患者さん本人の体調も少しずつではあるが、回復傾向にあり、心療内科に通わなくても済むようになって、食欲も戻ってくる。そして精神的、肉体的に少し余裕ができたので、第二子の妊娠を望むようになるが、この頃(33歳頃)から高温期になると不正出血が起こり、ホルモン剤を処方されて、一時期は不正出血が止まったものの、現在まで断続的に不正出血は続く。

33歳頃から心療内科への通院を止めれるほどに体調が回復してきているとは言っても、出産と育児でかなり小さくした腎器は充分には回復できておらず、寝付きの悪さ、夜間1~2時間置きに中途覚醒する眠りの浅さ、子供や自分の体調に関する心配性など、まだまだ腎気の損傷は深いと思われる。

また、これまでは脾気の損傷はあるとは言っても、お通じの悪さや食欲が無いという程度であったのが、33歳の秋以降、胃がムカムカしたり、胃カメラ検査で特に問題は無いが慢性胃炎ぽいと診断されたり、年末には胃もたれがして、ゲップが出たりと、はっきりと胃の不調と分かる症状が出てきており、去年から脾気の損傷が大きくなっているように思われる。のちの問診で分かったことであるが、2リットルの水飲み健康法を実践していた時期があったとのことから、これが全体の調子が上向いてきているにもかかわらず、脾気が落ちていった原因の可能性は充分に考えられる。

身体を拝見しても、足三里のそげてると思えるほどの広く深い弛み方、右脾兪の深めの陥凹など、今も脾気の損傷が大きいことが窺える。







このように腎気が少しずつではあるが、回復してきた時期に、不正出血が起こり始めているのであるが、これは腎気が回復し始めたので、肝気も立つようになり、そのために肝気がかなり弱った脾気に横逆して、不正出血が起こっているのではないかと考える。そのため、高温期という生理に向けて肝気が立ちやすい時期に、不正出血をしているものと考える。

以上のように脾気の損傷が以外に大きく、腎気もまだまだ回復しきれていないのが現状であるが、本人は自分の生活を見直して、「胃にやさしい」生活を送るなど、養生を心掛けるようにしており、基本的には回復基調であると思われる。ただ、ご本人も体調は良いがまだ不安定な感じがすると言うように、一度大きく壊した器を元に戻すには根気が必要である。




弁証論治



弁証:脾虚、腎虚

論治:健脾、補腎







主訴:問診

時系列の問診

切診

五臓の弁別

病因病理:弁証論治

治療指針:生活提言











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