目というのは上焦にあります。この目という場は、しっかりものを見るという 気血が集中する場であり、気血が充実していることが求められます。
本症例の女性はもともと精神的に緊張しやすく、脾気が弱いため高校生時代から過敏性大腸炎という 下痢の続く状態でありました。
脾気の弱さはそのまま20代になっても続き、全身的に気虚気味でありました。
全身的な気虚であるということは、鬱滞をおこしやすく、一度鬱滞がおこると、その解消がとても難しくなります。常におこしがちな精神的な緊張は上焦の動き難い肝鬱となり、目という場に 充分な気血が循る事が困難となり、目の奥の痛みという腎気の養いが足りないための症状が出現しました。
腎気の養いが足りない目の状態が続いたので、25歳ごろ身体は腎気をより消耗し、腰をこわばらせることで なんとか支えようとし、腰に痛みが発症。上焦で陽気が偏在し肝気が鬱結するため、下焦は相対的に冷えてしまい 腎の陽虚をおこしているという状態になりました。
結婚の前後にストレスがあり、一時期脾気がより弱まり体重の減少となるも、精神的に落ち着き、 食生活もより充実したため体重も戻り、下痢の頻度は減りました。
しかしながら、2年前の流産により、腎気を落とし、より下焦の場の虚損が進み、常に右の下腹部に鈍痛を感じるようになり、 卵管造影の負担がかかったあとは、より痛みが明瞭になりました。腎虚がひとつすすんだわけです。
これによって、目の奥の痛みもさらにきつさをまします。
生理の7日前から肝気の上逆のため、イライラし、脾気がついていけず吐き気がおこり、 生理の三日前から肝気を支える腎気の弱さが露呈し、右の太もも、下腹、腰が痛く、主訴である右目奥の頭痛が発症し、生理3日後まで 続いてしまっています。痛みなどの症状は腎気の不足からおこっているので、生理がきて肝気の高ぶりがおさまってもすぐには収まらず、生理後3日まで続くものであると考えられます。
腎気を補うことで、流産前の状態まで持ち直すことが期待できます。またもともとの脾気の弱さを立て直し 気虚をすくうことで、肝気が鬱滞しにくくなり、もっと目の奥の痛みの頻度も低下することが期待できると 思われます。
弁証:脾腎両虚
論治:益気補脾補腎
|
|
|
|