空咳の弁証論治


空咳の弁証論治
病因病理:弁証論治






病因病理



人が生きて行く、その姿、方向性を大きく支えていくのは、『生きる意志』です。

この方は、その『生きる意志』を、旺盛にもち、幼少時代から生き抜いてこら れ、いままた30代はじめにして、あらたなる進学にチャレンジなさっています。 これもこの旺盛なる生きる意志のおかげでしょう。

しかしながら、この大いなる生きる意思は、生きて生くその道の中にトラブルの 種をまき、また自分の肉体に対しても、鋭い刃物を向けることがあります。







小学校時代の教師とのトラブルや、鍼灸学校時代の人間関係のトラブルなどを候 うと、自分が正しいと思ったこと、それを貫くということは、自分の道を進んでいくときには、必要な推進力ですが、 ものごとは、一面だけでは成り立っていませんので(つまり自分では見えない面 がある)、対人関係のトラブル、肉体への波及ということになるのでしょう。

この方の、問診時の早食い、空腹感があり、便通があるとすっきりするというの は、脾気の健やかさ、受納の力の確か感じます。

しかしながら、切診当日の経穴の反応(右の関上虚、両脾募あり、胃兪、脾兪の 反応、太白、公孫、三陰交)は、脾気のかなりの弱りをしめしています。切診前 後の流れは、一ヶ月前からの花粉症発症と、急激な体重のアップです。そ して前日の鍼灸治療で、花粉症そのものはよくなっていると。

これらをみると、脾気は受納の力があり、沢山受け取り、結果として湿痰を生じ るほどのものとなり、湿痰の上に、外邪の進入により花粉症が発症。また、切診 当日は、前日の鍼灸治療を受けていることから、欝気がとれることによって、花 粉症の症状自体は解消するも、脾胃の問題は、解決し得ないとみると、この脾胃 の痛め方は、受納の力はあるものの、湿痰を生じさせる脾胃の弱さ(つまりスト レスを脾胃の力で解決しようとするけど、行き過ぎてしまうということ)がか なり以前からあることをしめしているのでしょう。







さて、この脾胃の弱さは、先天よりの弱さであれば、受納の力がこれほどまであ るのはおかしいと思います。つまりこれは肝気によって痛めつけられたために、 脾気が弱っていたのではないかということです。

鍼灸学校時代や、小学校時代のエピソードを候うと、肝気は熱をもち、その刃を ふるっていたことがわかります。つまり肝気犯胃、肝の鬱熱が胃熱と為り、脾胃 そのものの器を壊すと。これが食道裂溝、逆流性胃腸炎とまでいわれた、脾胃の 器の壊し方の原因なのでしょう。この肝気犯胃がおこっているときには、体重の 変動がありません、つまり、リラックスできないほど肝気がたかぶると、食欲も 抑えられ(肝気犯脾)、湿痰が生じる隙間はなくなり、かわりに胃熱、脾胃の器 の損傷となるのでしょう。

小学校時代に損傷した脾胃の器の傷はかなり深く、ちょっとした外因で湿痰を生 じ、身体を重くし(梅雨の重だるさ)、夏には脾気がたちにくく、調子を落とす ことになります。しかしながら、先天的な脾虚ではなく、また腎気が割合としっ かりしているため、成長していっています。ただし、朝食も抜きなのに中距離を 走るとか、煙の中での演奏のエピソードは、この方の、なみなみならぬ、『生き る意志、肝気の強さ』を感じさせます。そしてこの肝気の強さは、楽しいこと、 好きなことならば、脾胃の器を壊すという方向にはむかわないのでしょう。ただ し、やはり、どうも、やりすぎてしまうため肺気を傷ってしまう(肝気犯肺)にまで到達することはあり、 そして、逆に、対人関係の場合は、肝気犯胃がきつくなり、脾胃の器を壊すので しょう。

エピソードを重ねると、肝気が暴走し、鬱熱を生じると、胃を傷り、脾を壊す。 壊された脾のせいで、湿痰が生じ、身体の重さを生じる、常に、ベクトルが上向 きであるので、肺気を傷りがちで、華蓋の損傷(表衛の損傷といっていいのか?) 、肺気の不安定さとなり、外邪の進入である花粉症をゆるしやすくなるし、空ぜ きといった症状を生むのでしょう。







肝気のコントロールが一番の課題でしょう。

鬱熱まで生じるときは、熱を抜き、肝気を引きおろす。

普段も、肝欝を軽く払うことで、脾気がすなおに立つようこころがけ、暴飲暴食 をさけ、自然な形で(つまり、肝気の意志の力で自分の身体を支配して体重を 落とすということではなく)体重が増えないような生活をしていくことが大切で しょう。生き方として、自分の肝気、生きる意思(特に対人関係)とどう付き合 うか、身体の課題として、西洋医学的な方法も含め(ピロリちゃんの除菌)脾胃 の建て直しをして欲しいと思います。

また、暴走する肝気は、腎気をはみます。これがまた、押さえられない肝気と為 る悪循環を生みます。暝想や歩行などで、腎気を養うこと、そして暢びやかな肝 気を育てることを、心がけていただければと思います。




弁証論治



弁証:肝気欝結 脾気虚損
論治:疏肝理気 濡養脾胃








主訴:問診

時系列の問診

四診

五臓の弁別

病因病理:弁証論治











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