頸部痛の弁証論治:弁証論治・生活提言


頸部痛の弁証論治
病因病理




頸部痛を主訴として来院しておられますけれども、その発症や経過、そして治療効果のあがり方などを見てみると、これは単なる頸部痛ではなく、全身の身体のバランスの乱れが現在は頸部に限局された痛みとして出ていると考えるべきところです。これが何を意味しているのかというと、体調を崩したり年齢を重ねることによる全身の生命力の低下によって、頸部痛以外のさまざまな疾病が発生する可能性が高いということです。現在は、身体全体のバランスを構造として崩して内臓にその病が及ばないようにしていると考えることもできます。そのため矛盾が頸部に集中している状態であるとも言えるわけです。

この病因病理においては、そのあたりのことを明確にしていきます。







主訴は、鬱病で四年近く養生し続けた後にさしたる原因もなく発症しています。これは、病で起き上がれなくなっている時期に身体のバランスを大きく崩したことによるのではないかと考えられます。と申しますのは、体調がよくなっているにもかかわらず、現在のお身体を拝見すると上背部の筋肉の左右差が大きく、頸部の筋肉の左右差も非常に大きいためです。このような大きなバランスの崩し方は大病後でなければ先天的なものであると考えられます。もし先天的なものであれば、より若い頃から頸部痛などに悩まされているはずですので、これは大病によって起こった身体の歪みをいまだに引きずっていると考えなければなりません。

この大病である鬱病ですけれども、東洋医学的には精神的なものというよりも肉体的な問題として考えていくことが多く、心脾両虚という証候名で表現されます。これは、簡単に言うと、生命力が低下したために胃腸の働きが悪くなり血液が十分補給されなくなって東洋医学的にいう心の裏支えができにくくなったということです。

多くの場合、ここには心身の過労が関わっています。この症例においてはお子さんの大学受験に一家でしゃかりきになったということが挙げられていますが、一般的にはこれだけの要因で発症することは考えられません。大家という比較的心身にゆとりのある生活をされておられるわけですからなおさらです。

ということで経歴をさかのぼってみますと、「子供の頃から食事時間が長いが、食事の量そのものはあまり摂らない。」という項目が目に留まります。これは、先天的に胃腸の丈夫でない人によく現れる状態で、本能的に脾胃を守ろうとしているのではないかと考えられます。

現在、便通や食後の腹脹などの胃腸の問題は出ておりませんけれども、その理由はこのような習慣づいている胃腸の保護姿勢にあるといえるでしょう。







ただ、現段階で夜間排尿があり残尿感があって尿切れが悪いことをみると、東洋医学でいう腎が弱っている可能性が考えられます。これは、生活習慣となっている水分をよく摂取するというところに、水の臓と呼ばれている腎を自身の本能で補おうとしているのであると考えることができます。

この腎の問題が肉体的には腰の弱さとして出ています。それが腎兪の反応です。また胃腸の弱さはことに腹部の皮膚の状態として表れています。このように腰腹という身体の根幹となる部位が弱っているその土台の上に胸背部が乗っているわけです。このうち背部は、左が弱く緩み、右が硬く張っています。この上に頭頸部が座っています。このうち頸部は、右が弱く緩み、左が張っており、この左頸部に自覚的な痛みがあるということです。

このように物としての肉体のバランスが崩れているわけですから、それを立て直すにはかなりの手順と手間とが必要となります。土台に手を入れずにそれに乗っているものだけを建て直そうとしても、それはうまくいくわけがないということは、ご理解されるところであると思います。

ただ幸いなのは食事や二便の状態を見る限り、まだ臓腑的な損傷は強くないということです。ここまで及んでくるとさらに建て直しは困難になってくると思われます。







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