左ふくらはぎの痛みの弁証論治


左ふくらはぎの痛みの弁証論治
病因病理:弁証論治




患者さんは若いころから便秘がちであり、他の人より多くを食べる方ではなかった、 ということから考えると先天的に脾の器が小さかった可能性があります。便秘がちの 時の便は硬いコロコロ便であったことから、もともと肝鬱脾虚を起こしやすい素体と 考えられます。







35歳くらいから痔になり(現在も年に1,2回出血)、手術もすすめられたそうで す。これは脾の運化機能の失調から湿濁が溜まり発症したものと思われます。

42歳の時には胆石、これは中焦の湿濁が内生化火し発症したと考えられます。肝鬱 脾虚が長期化し化火するに至ったと思われます。 45歳~66歳までずっと肝機能に 異常、これも同じような病因だと思われます。

若い頃から暴飲暴食はせず食事も規則正しくとっていたにも関わらず、患者さんは脾 の消化機能が順調に働かず内湿を溜めやすかったようです。このことからも先天的な 脾気の弱さが伺われます。







45歳~57歳までに起きた腸閉塞は、57歳で腸の癒着を手術した後、発症してい ないことから、胆石の術後後遺症であることは明らかです。素体として脾胃が丈夫で なかった上に術後の癒着が加わり15回もの入院に及んでいます。度重なる腸閉塞で ますます脾胃を傷めた可能性もあります。

40代位から腰痛、58歳くらいからは耳鳴りと、どちらも現在まで続いている症状 であり、共に腎気の弱りが伺われる症状です。加齢による腎虚が考えられますが、患 者さんの場合3回の開腹手術により腎気をますます損傷した可能性が考えられます。







63歳で退職。また64歳には長女家族との同居が開始され、生活環境に大きな変化 がありました。同じ頃長女夫婦のことで大きなストレスもありました。この後、一時 的にめまいがおきています。これはストレスから肝鬱を起こし肝陽が亢進しおきたの ではないかと思われます。

続いて起きた胃潰瘍、胃の悪性リンパ腫は肝鬱脾虚の長期化にさらにストレスが加わ り肝気犯胃へと進んだものと思われます。同じ頃大腸ポリープを切除し、高血圧の薬 を飲み始めています。このあたりは腎気の問題をも絡んできて、病を一層深くしたも のと思われます。加齢により落ちてきた腎気が脾気をバックアップできなくなり、ま た肝鬱を抑えられず、今まで弱かった部分がますます露呈してきたと考えられます。







患者さんは2年前から健康のために散歩をするようにし、食事を薄味にしてよく噛 んで食べるように心がけ、体重が徐々に3㎏減少しました。最近は便秘することも 減っているようです。脾気への負担が減り、全身状態が改善してきていると思われま す。

そのような中、主訴である左ふくらはぎの痛みは昨年夏から出ています。同部位を過 去50代の時に肉離れで損傷しています。この時の発症の直接的原因は外傷ですが、 患者さんの場合は脾虚が進み肌肉を十分に養うことができずに簡単に肉離れを起こし てしまった可能性が考えられます。

現在の痛みの部位は外傷の部分だけではなく、胃経のラインも痛むそうです。痛みは 重だるい鈍痛で、脾虚による湿の停滞での痛みが伺われます。夜間寝てからの痛みで あり、腎気の弱りも感じられます。ご本人の養生によって脾気が少し回復してきたと ころですが、加齢により徐々に全体の器が衰え、その衰えが過去損傷しきちんと治療 していなかった弱い部分や、また弱っている臓器の経絡に表面化しているものと思わ れます。




弁証論治



【弁証】 脾虚 

【論治】 健脾 

主訴は局所の痛みでありますが、それよりも全身状態をより改善することが重要と考 えました。患者さんの養生によって脾気への負担が減り、全身状態は改善傾向にあり ますから、それをさらに補うように脾胃を起て全体の生命力を充実させることを優先 し、その生命力により局所の痛みも軽減することを目標にします。




【生活提言】



今までの養生で良い結果が出ていますのでこのまま続けていきましょう。
食事量の問題には個人差があります。若い頃から食後眠くなることが多かったそう で、食事に気をつけてはいたつもりでも、自分の脾の器以上に食べ過ぎていたのかも しれません。眠くならない程度の食事量にしましょう。
運動や散歩は無理なく楽しんで行うと良いです。
就寝時間をもう少し早めても良いかもしれません。







主訴:問診

時系列の問診

切診

五臓の弁別

病因病理:弁証論治











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