緊張するとお腹が張る弁証論治
病因病理:弁証論治






『病因病理』



今回の主訴である緊張による腹痛、便秘、下痢は、2年前の仕事での精神的ストレスが引き金になり起こ っていることから、肝気横逆により脾胃が損傷されて出た症状であると考える。

また、同時期に眠りが浅くなり、何度も夜中に目を覚ましていることから、昼間に肝気を張りすぎて、夜に この肝陽をうまく収めることができなかったと考える。

現在は仕事も落ち着いてストレスも減ったことにより、肝鬱も軽減され、また1年前からヨガを始めたこと により、仕事で張った肝気をうまく収められるようになり、不眠症状は改善され、便の状態もだいぶ良く なってきている。では、なぜ未だに便の状態は改善されないのであろうか?






この方の素体を考えると、直接拝見した感じから、とても緊張されているように見受け、平素から緊張しや すいタイプの方ではないかと思われる。本人は感じていないかもしれないが、常に肝気を張って生活してい ると推測する。乳房脹痛、イライラ、生理前の腹痛、生理前に足が冷えるも、肝鬱によるものであると考え る。

そして、もうひとつの素体として、腎の器の小ささが考えられる。ちなみに、ここでいう腎の器の小ささとは 陰陽両虚と考えている。その根拠は、もともと初経から経遅であること、子供の頃から眠りが浅いこと、冬 やクーラーに弱く体や足が重くなるといったことです。しかし、腎の器は小さいなりにバランスが取れてい て、普段の生活には支障はありません。ただし、そのバランスは器が小さいがゆえに変化に敏感で、北国な らではの寒さやクーラーの外寒、肝鬱で体調に影響が出ると考える。

肝鬱傾向ではあるが、30歳までは便の状態も順調で、また食欲もあり、どちらかというと大食であることか ら、脾胃の器がもともとしっかりしていたため、それほど肝気の悪影響を受けなかったと思われる。ずっと 肝気を張って生活しいるが、他の臓腑とのバランスが取れていたため、特に体調に支障なく30歳までやって これたと考える。しかし、長年の肝鬱の影響は、脾、腎のみならず、時々痰がでることや肺経の硬さなどか ら肺、お血があると思われる体表の感じなどから全身にも及んでいると考えられる。






以上のことを踏まえて、現在の主訴である、便通異常のことを考えると、30歳のときの強いストレスで、こ れまでがんばってきた脾胃が一気に肝気に傷られて、便の状態が悪化した。同時に、生理痛がなくなるなど もともと年齢的にも腎が虚し始めているところに、肝気を普段以上に張ることにより、さらに腎気が損傷さ れた。腎気が脾胃を支えることができなくなったことにより、肝鬱で損傷された脾胃の回復が遅くなり、脾 胃の弱りが常在化して、現在も続く便通異常を呈していると考える。これが肝鬱による脾胃の損傷だけなら ば、ストレスがないであろう休日には便の状態が安定するはずで、そうでないのは、肝鬱が現在の便症状を 引き起こしているのではなく、脾胃の虚が原因であると推測される。






以上より、弱っている脾胃を建て直し、肝鬱を取り払う治療をする。この治療の際、肝鬱気滞によるお血の兆候が みられるので、今後お血の変化を注意深く見守っていく必要がある。生活面では脾胃をこれ以上傷つけない ように、暴飲暴食や冷たいものの摂取を控え、またストレスをためないような生活を心がける必要があると 考える。ここで、腎気も補うとより早い脾胃の回復が見込まれる。




『弁証論治』



弁証:脾虚、肝鬱血瘀
論治:健脾、疏肝理気








主訴:問診

時系列の問診

四診

五臓の弁別

病因病理:弁証論治











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