月経前症候群の弁証論治


月経前症候群の弁証論治
病因病理:弁証論治







この方の素体として、まず、脾胃の器が小さいものと思われる。

これは、子どもの頃食べたい時にたくさん食べたがガリガリだったということ現 在も食事量は多いが食べるのは遅いということ、便の状態が一定しないというこ とから伺える。

成長に伴い、脾胃もある程度しっかりして、食べたら食べた分が体重に影響でき るほどになった(しかし、肥満するほどではない)

中学生の頃、毎朝下痢をしていたのは、食べ過ぎた分を排泄し、身体を浄化する 作用が働いていたものと思われる。

腎を養うべき脾胃の器が小さいため、腎の器もあまり大きくなれなかった(中学 生の時にバレーボールで痛めた腰が治りきらず、慢性的にだるい痛みが今も続く など、腎の器の小ささが伺える)が、それなりに腎気が盛となり天癸が至り、 11歳の時に初潮を迎えた。初潮後しばらくは、腎気は充分盛ではなく子宮の成長 も不充分なため、生理時に鎮痛剤を飲まないといられない腰痛が起きていた。

し かし、高校生になると腎気もそれなりに安定し、生理時の腰痛が軽くなってきた。

また、高校生になると小学生の頃から起きていたアレルギー性鼻炎や結膜炎が無 くなるなど、成長に伴い次第に生命力が充実してきた様子が感じられる。







ただし、この方のもうひとつの素体として、肝気をはって生活しやすい(緊張し やすい)タイプであることが感じられる。高校生の頃から過敏性大腸炎が起きて いるが、肝木乗土で肝鬱により脾胃に症状が出やすいようである。

主訴である生理前のイライラ、腹部不快感、憂鬱、また生理前の乳房腫脹は、も ともと肝気が伸びやかでないので、生理前になると普段より肝血が虚すため気滞 がなお激しくなることによって起きる。

これらの生理前の症状は、20歳頃より出現するが、はじめは生理前の1,2日 だったものが、年齢を重ねるごとに期間が延び、23歳の時には生理の2週間前 から起きるようになった。

これは、18歳の時、家族と離れ専門学校に入るため東京に出てきたこと、21 歳で就職したことなど肝気をはる機会が次第に増えてきたためと思われる。また 緊張の度合いがだんだん強くなってきていることも考えられる。24歳の時仕事 のストレスから肝気犯胃となり、1週間食べ物も飲み物もうけつけないという状 態に陥っていることからも想像される。







腎の器が小さいため、肝鬱によって腎気が損傷されやすい。高校生の頃までにあ る程度充実してきた生命力は、18歳で東京に出てきて肝気をはることによりや や損傷されたと思われる。この頃から帯下が気になり始めたり、生理が2ヶ月無 かったり、中学生の頃より生理の出血量が減ったりしていることから伺える。平 熱が東京に来てから下がったということも、生命力の低下と言えるのではないか。

生理前の症状が2週間前からに伸びた23歳前後に、他の症状も起きはじめてい る。仙腸関節のせん痛や生理中の眠気が始まったり、排卵痛が始まったりなどか ら腎気損傷が感じられる。

また、右ひざがいきなり痛くなったが、とくに思い当たる外傷などはなく痛み始 めたことから臓腑の弱りとの関連が考えられる。階段を昇る時に痛いということ から、脾気の弱りが考えられるが、痛い場所は特定できず、奥のほうということ で、腎気の弱りも考えられる。

この頃出現した、唇が痒く夜中に掻いて起きてしまうということや、口角が裂け ること、口渇などから胃の陰虚が考えられる。

お腹がいっぱいになると背中が痛いのは脾の器が小さいから受け止めきれないと いうことだと思われるが、お腹がすくと背中が痛いのは、胃熱の影響かと思われ る。

肝気鬱結(気滞)は胃の陰虚を招き胃熱を生じるため食欲が増す。生理2週間前 から生理中は体重が2kg増え、生理が終わると体重が減るのですっきりすると いうことは、生理が終わり肝鬱が解消すると胃熱がおさまり、食欲が戻るため、 脾気が回復し、腎気も回復し内湿が排泄されてくるためと思われる。このことか ら、生理前以外の状況では脾腎は働くことができるが、肝鬱が起きてしまうとう まく働けないでいるということが考えられる。

また、ここ2,3年はそのすっきり感が増しているということから、生理前の肝 鬱がきつくなってきている、緊張の度合いが増しているということが言えるであ ろう。







肝鬱は腎気を損傷するが、腎気が損傷されると、気の上衝を押さえることができ ないため、ますます肝鬱がきつくなるという悪循環に陥る。生理と関係なくのぼ せる、暖房はのぼせて調子が悪い、などの気の上衝による症状があらわれている ことから考えられる。

喉の違和感(ひっかかるような、咳がしたい感じ)も気の上衝と考えられる。 お腹がいっぱいになると咳が出るということは、腹満が起こり直接気の上衝を引 き起こすということも考えられるが、また、胃の陰虚傾向があるため、お腹が いっぱいになるとまたも胃熱が発生することになり、さらなる気の上衝を起こし て咳が出るということも考えられる。

また、排尿関係の症状(頻尿、残尿感、尿の切れが悪い、尿の白濁)があらわれ ていることから、肝鬱による腎気の損傷で腎の排泄機能に影響があらわれ生理が 終わったあとに生理前に貯まった内湿が排泄されても完全には排泄できずにいる ようだ。これは、生理と無関係にむくむこと、梅雨時は湿気でだるいこと、今も アトピーが肘に出ることから考えられる。

この内湿によって25歳のとき花粉症の症状もあらわれるようになったと考えら れる。







帯下は帯脈の病と言えるが、これを支えているのは脾腎であり、この方の場合、 腎気が落ちたため、腎気によって支えられる脾気も落ち込み、内湿が排泄されづ らくなったことに関連しているのではないだろうか。内湿が貯まってきた事は、 20歳のときにアトピーが肘や膝の裏、下着が当たる肩の部分にできたことから 想像される。

そんなおり、今年に入って祖父が亡くなる。おじいちゃん子だったことから肝鬱 がきつくなることが考えられるが、症状の発症の時期と重なってもいつもと症状 のきつさは変わらなかった。しかし、後に肝気犯脾により、退職前1週間、吐き 気、下痢、腹痛で体調を崩してしまった。

しかし、25歳のとき起こっていた側頭痛(のぼせると出る)が現在は落ちつい ていること、生理周期はまちまちだが飛ぶことはなくなり以前より安定している ことから、少しずつではあるが生命力は回復傾向にあるのではと思われる。







この方の症状を悪化させる要因は肝鬱であり、肝鬱がきつくなるとますます食欲 が増して内湿が貯まっていく。つまり肝鬱が軽くなり正常に脾腎が働ける時期に 排泄できる内湿を上回って、次第に貯まってしまう。

そこで、良くするためには肝鬱をのぞき、内湿をうまく排泄できるよう、脾腎を バックアップしてあげつつ、多少の肝鬱にも耐えられるくらい脾腎の器を大きく してあげるという方法が考えられる。

家族を考えると糖尿病を発症する可能性もあるので、今のうちに食生活が安定で きるように食べ物の内容もチェックする必要ありと思われる。







弁証:肝気鬱結  脾腎の虚

論治:疏肝理気  補腎補脾







主訴:問診

時系列の問診

四診

五臓の弁別

病因病理:弁証論治











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