首・肩・背中の痛みの弁証論治


首・肩・背中の痛みの弁証論治
病因病理:弁証論治




主訴である首肩背中の痛みは、4~5年前の現場で力仕事をすることが減り始め、事務的な仕事へと変わり始めた頃から起こり始めている。もともと以前に何度も首肩に外傷を受けたという、経絡経筋の損傷があると考えられる。しかし5年以上前には肩凝りはあっても、こんなにずっと痛むことは無かったので、経絡経筋病よりも深いものになった可能性が考えられる。

この首肩背中が痛みだした頃は仕事も忙しく、食事も不規則で、精神的なストレスも多く、心身ともに過労状態であった。まず、水が触れないという症状が起こり、鍼治療で治ったと言っているが、それでも約一年ほどかかっている。次いで主訴の首肩背中の痛みが起こり、足の裏が熱くて眠れないというような症状も出ていた。

これらの生活環境を考えると、確実に腎気の損傷があったと考える。お水は触れないがお湯は触れるということを考えると陽気の損傷、足の裏が火照るということからは陰気の損傷が窺え、過重労働で腎の器をかなり小さくしたものと思われる。

ただこの腎気の損傷は、首肩背中が痛み出した以前からずっとあったものと思われる。22歳から仕事を始めて休み無く働いて、過労で子宮内膜症を患ったり、その後1年の完全休養で体調が戻ると、また忙しく働く日々を送り、現在まで至っている。仕事を身体が動かなくなるまでがんばったり、そんな忙しい中でもアウトドアのレジャーを楽しんだりと、かなり強い意志を持ってがんばるという肝気の張りの強いことがわかる。その肝気の張りが長年にわたりずっと腎気を損傷し続けていたと思われる。

この肝気の強さは、18歳頃から偏頭痛をずっと患っていて、仕事が忙しかった時期には薬を毎日飲むほどであった、肩こりがひどくてよく強く揉んでもらいにマッサージに行っていたなど気の上衝が強いことからも窺える。

また、もともと小食で、小食なのに食後のお腹の張りが強いこと、いきまないと出なかったお通じなどを考えると、脾器は小さいほうであると思われる。仕事が忙しいこともあり、食生活が不規則になったり、早食いな方であったり、デザートに甘いものを食べたりと、ずっと脾気を損傷する生活でもあったといえる。そんな脾気の虚損がずっと座っていると大腿前面が痺れることに繋がっていると考える。

このようにずっと忙しい生活で体調を崩していったなかで、内臓マッサージというお腹を30~40分くらい重点的に揉み、ついで背中を少し揉んでくれるというマッサージに通うようになって、それまで近かったトイレ回数がほぼ正常になり、便通が良くなり、13kg痩せたりと脾気のみでなく、腎気も上げられたように思われる。

去年あたりから仕事の忙しさも少し落ちつき、精神的なストレスも減ってきているようで、腎気も多少は回復してきていると思われ、首肩背中の痛みのピークは過ぎたようである。ただ依然続く首肩背中の痛みは、腎気の損傷の深さが窺える。







<弁証論治>

【弁証】腎虚、脾虚、経絡経筋病

【論治】補腎、健脾、虚損の経絡の疏通







<治療方針>

切診から診て、かなり肝鬱が強いように思われるが、マッサージで変化が少ない身体状況や、今はストレスもだいぶん減ってきていることを考慮しても、腎気の建て直しを図ることが1番であると考える。

そこにもともと弱く、現在も虚損状態にある健脾を加えることで、補腎を援ける。 裏を立てながら、経絡経筋の虚損があると思われる局所へと気を導けるようにする。







<生活提言>

現在は、仕事を部下に任せられるようにもなり、ストレスも少し減り、アイスクリームを食べないようにしたり、早く寝るように心掛けたりと、以前と比べると養生ができ始めているところです。

それでも首肩背中の痛みが取れないのは、これまでの過重労働がかなり土台の生命力を損傷してきていることを意味しています。首肩はもともと何度もいためているところなので、風邪などの外からの影響や、不摂生や身体の使いすぎなどによっても、一番弱いところである首肩に症状が出やすいということは言えます。ただ、今の身体の状況では、局所をマッサージなどでいじっても、その局所を回復させる身体の力自体がない状況なので、局所治療では改善は見込めないと考えます。

この身体の土台の力の底上げを図るためにも、鍼灸治療のみでなく、私生活での養生が大切になってきます。仕事上のお付き合いがあって、休日も休めないことはあるでしょうが、あまり無理をしないように気をつけましょう。

食事は小食のようですが、お腹がすいてなくても時間で食べるため、消化能力の落ちた胃腸の力にさらに負担をかけることとなっています。食後にお腹が張らない程度の食時量、早食いなどに注意しましょう。

睡眠は早く寝るようにされているので、このまま眠れるときは早く寝ることを続けられると良いでしょう。







主訴:問診

時系列の問診

切診

五臓の弁別

病因病理:弁証論治











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