治療指針:生活提言


左首の痛みの弁証論治
病因病理:弁証論治




病因病理

この患者さんの時系列を見ると、体重の変化が多いのが特徴的である。20歳代の頃はご自身でベスト体重と思われる55kg前後を維持されていたが、34歳の頃、よく歩くようになったのと、仕事のストレスで食欲が無くなり、大人になってからの自己最低記録の51kgまで体重が減り、しばらくはそれを維持していた。

昔は爆食だったと本人が言うようにかなりの大食であったが、元々脾器が丈夫だったと思われ、30歳前半までは、多少脾気が内的要因(大食、早食い)、外的要因(実習や仕事のストレス)によって損傷されても、自己の治癒力で回復していたと思われる。

しかし歩くのを続けていたにもかかわらず、36歳頃から年に1kgのペースではあるが、確実に体重が増加し始める。ここに来て、大食早食いによる日常的な脾気の損傷を回復しきれなくなってきている様子が窺え始める。




40歳の時、新しい職場へ異動となり、人間関係などストレスの多い状態となる。翌年には背中にドンッという痛みを頻繁に感じるようになる。いろんな病院に行ったが原因が判明しなかったとのことであるが、後の健康診断で十二指腸潰瘍の痕があると分かり、胃痛だったのではないかとのことであった。

この40~41歳の頃は、数年前から脾気が弱ってきているところに、肝気が横逆し、脾の器そのものにも影響が出始めた時期と考えられ、脾気を大きく損傷して脾器を一段小さくしたと思われる。

42歳以降、胃腸の調子が悪いと感じることが多くなり、脾器が小さくなったために、食事や肝鬱の影響を受けやすくなっていることが窺える。ストレスの多かったこの職場では背中の痛みを感じ始めたのと同じ頃から、右腕に鈍痛も出ていたが、44歳で職場が異動となり、人間関係のストレスが無くなると、右腕の鈍痛も無くなっていることから、肝鬱による痛みであったと思われ、この頃の肝鬱の強さが窺える。




44歳の職場異動で、人間関係によるストレスは無くなったものの、パソコン作業が多くなり、また違うストレスを感じるようになる。

翌年45歳の冬に左膝の靭帯を損傷し、仕事はしていたものの、しばらく安静にする必要があり、歩くことが少なくなったのもあって、体重が更に2kg程増える。今は昔ほど大食いではなく、人並みであるとのことであるが、職業柄早食いは続いており、両方の脾募、足三里(右>左)の弛み、右膵兪の脹れ、左脾兪の大きい弛みなどを診ると、脾虚の状態は進行し続けているように思われる。

その年の春には生理が来ず、漢方を処方してもらって生理が再開する。特に思い当たる直接の原因は無いとのことであるが、強い肝鬱により生理が乱れたとも考えられる。また、これだけ脾虚肝鬱が長く続くという生活状況を考えると、腎気にも影響が出始めたために生理が乱れたという可能性も考えられる。

このように肝鬱脾虚が続き、梅雨に入ってパソコン作業がかなり忙しくなってピークを迎え、肝鬱が最高潮となり、とうとう左首が痛みで動かせなくなってしまう。これ以降、左首に痛みが残り、あまり首を回せなくなる。この左首の痛みは、パソコン作業と連動していることを考えると、肝鬱による影響が大きいと思われる。




またパソコン作業という同じ姿勢での長時間の作業により、左首の経絡自体にも損傷をきたしており、作業をしていない肝鬱のない状態でも動作痛が出るという状態になったと思われる。つまり、経絡経筋病に肝鬱が大きく影響しているものと考える。整体で局所を揉んでもらったり、パルスを掛けてもらったりしても多少しか良くならないことを考えると、この経絡経筋病は虚損が主体であると思われる。つまり肝気を張って頑張っているのに局所の損傷を補うことができないほど、局所の気虚状態がつよいと言える。そのため、その弱さを補うために張っている肝気の強さが、返って左首に棒が入ったような突っ張り感として本人には感じられる。

このように、肝鬱が強いと表面的には凝りの究極の状態として左首が痛くなるが、痛みの中心は虚損であると思われるが、この虚損をなかなか克服できない理由として、脾虚が深く関係している可能性が考えられる。

また局所治療では治り難い肩凝りが元々あり、十二指腸潰瘍ができていたのではないかと思われる時期に背部の鈍痛と右腕の重痛があったこと、今回の首の痛みが出る直前には慢性胃炎の診断が付くほど胃器自体に損傷があることを考えると、検査では検出されないが、肝炎や膵炎などの臓器の炎症が日常的にあることも考えられ、その反射としてひどい肩凝りが出ている可能性も考えられる。

いずれにしても、脾気の損傷がかなり深いことが窺え、そのために左首の痛みもなかなか治りきらないものと考える。


弁証論治

弁証:脾虚、肝鬱、三焦経と小腸経の経絡経筋病

論治:健脾、疏肝理気、三焦経と小腸経の疎通して補気







主訴:問診

時系列の問診

切診

五臓の弁別

病因病理:弁証論治

治療指針:生活提言











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