目眩 難聴の弁証論治


目眩 難聴の弁証論治
病因病理:F案




小学生の頃に疲れると目眩がしたり、尿が濁ったりと腎気の弱さを窺わせるが、成長するに従ってこれらの症状が出なくなっていることから、成長期における腎器の不安定さによるものであったと考えられる。

18歳という若い頃にはだるい、やる気が出ないというなんとなく体調の不調があり、がんばろうとすると吐き気がするということからも肝鬱が強く、エネルギーが空回りしていたと考えられる。18歳というとちょうど高校3年生で受験勉強の頃でもあり、肝鬱が強く現れ出したと思われる。

19歳で短大に入学してからは、勉強に遊びにと忙しい学生生活を送っていた。その年の夏に、突然足を中心に四肢がむくむことがあり、その翌年には、座っていると前のめりになるような目眩を感じるようになる。現在まで、足のむくみと前のめりになる目眩は時々起こるようになる。

もともと、汗をかかない、夏前に汗をかくように訓練すると身体に熱がこもらず、むくみも楽であったり、むくみやすいのは湿気の多い暑い季節、普段出きらない感じもあるお通じが下痢をしてスッキリ出し切ったら排尿も増えるというように、内湿の捌きが悪いと思われるところがあり、そこに肝鬱が加勢して気滞が起こり、内湿の滞りが強くなって、足のむくみや前のめりの目眩が起きるのではないかと推察される。

この頃から現在まで続く症状の一部が出始めていること、その原因が肝鬱により強化される内湿の症状と考えると、勉強に遊びにと忙しい生活を送っていたという短い表現ではあるが、思った以上に肝気を脹ってがんばっていたと思われ、脾気も落としていたものと推察され、その裏には腎気の損傷があった可能性も考えられる。







その後、結婚、第一子の出産となるが、妊娠中は食事の節制をしていたにも係わらず体重が10kg増え、内湿の捌きの悪さ、脾気の弱さが窺える。出産には多少の困難があり、出産後は悪露が長引き、子宮下垂のような感覚があり、疲れやすくなるという腎気の損傷が窺える。産後の豪華な食事により、体重は減るどころか更に太り、脾気を支える腎気が落ちた上に、ますます脾気を傷めることとなった。

2年後に第二子を妊娠するまでに少しづつ体重を元の50kgに戻していっていることから、養生により少しは脾腎の虚損は持ち直しつつあったのではないかと思われる。しかし、妊娠中に16kg太り、身体がだるく、軽いつわりが出産まで続くという気逆が起こっていた。ただ、今回は産後の食事に気をつけていたこと、赤ちゃんがよく母乳を飲んでいたことにより、体重が1ヶ月で元の50kgに戻る。

これら2回の出産により身体の大きな変化があり、脾腎の損傷もあったものと思われるが、産後には前のめりの目眩があまり起きていないことを考えると、脾腎の直接の損傷のみで前のめりの目眩は起こらないものと思われる。







出産後、のんびりと子育てや家事をしていたが、35歳からアロマを本格的に勉強するようになり、36歳にはアロママッサージの仕事を始めることとなる。この頃からじっとしている時に、目がちらちらするような頭がジーンとする目眩を感じるようになる。このジーンとする目眩は、39歳で専門学校に入学してからは徐々に頻度が多くなっており、仕事や勉強にと忙しくなり肝鬱が強くなっていくのに比例していることが窺える。また、35歳頃から体重も徐々に増えており、内湿をますます溜めていったことも窺え、そこに肝鬱が加わったために、新たな症状のジーンとする目眩が出現し始めたと思われる。ただ、このジーンとする目眩も、前のめりの目眩と同じように動いている時ではなく、じっとしている時に起こるということから、肝鬱による直接的な目眩(内風)ではなく、肝鬱により気滞が強くなり、より明確に内湿の症状が出るものと思われる。

このじっとしている時に起こるジーンとする目眩や前のめりになる目眩以外に、メニエール発作様の目眩を37歳頃に起こしている。これは肝鬱が強い中で、突然内風が起こったために激しい症状(動けない)を呈していたものと思われる。







また、専門学校1年の秋には試験の後の風邪をきっかけに突発性難聴を発症することとなる。この頃には日常的になっていると思われる肝気を脹るための気の上衝が強いところに、風邪というますます上衝を煽るきっかけがあり、上焦に鬱熱化火が生じ、突発性難聴を発症することとなったと思われる。この化火は耳の器を傷つけることとなり、この突発性難聴以降、耳塞が頻発するようになった。

このように生活が忙しくなると肝鬱が強くなり、それが極限までくると直接症状を表すこともあるが、日常的には気滞を強め、内湿の滞りを強くして、じっとしている時に症状として現れるように思われる。

この肝鬱が強いのは、飯塚さんの性格的に物事をがんばってこなすという肝気の強さからきていると思われる。結婚してしばらくや妊娠出産、子育てのみをしていたころはそれほど目眩も体調の不調も無かったことを考えると、今の生活状況が自分の器以上の労力を必要とするために、肝気を脹っていると思われる。







一方、20歳頃から続くしつこい内湿に関しては、素体としての脾気の水湿の運化作用の弱さがあるものの、飲食の不節により更に脾気を傷めて、内湿が溜まり、その内湿が脾気を傷めるという悪循環も生んでいると思われる。この飲食の不節は、左の肋骨急がめくれあがっている、右心兪から胆兪まで盛り上がり中に筋張りがあるなどの切診情報からも窺える。

また、この脾気が助けられないもう一つの理由として、腎気の不足があると思われる。切診情報からも、右尺位が弦短、左外関の冷え、右申脈の腫れ冷え、三焦兪の陥凹、右腎兪の陥凹トップ、右大巨の扁平な感じで冷えなど、特に腎陽の不足が大きく、脾気が内湿を捌ききれない一因となっていると考えられる。







主訴:問診

時系列の問診

切診

五臓の弁別

病因病理:I案

病因病理:Y案

病因病理:F案











一元流
しゃんてぃ治療院