治療指針:生活提言


疲れが抜けない弁証論治
病因病理:弁証論治




病因病理



本症例の主訴は体力・精力低下、疲れやすいということです。
学生時代から、現在にまで至っているこの主訴は、ストレスを感じながらも 肝気を張り続け、身体に無理を重ねて、回復できにくい状態となって います。

中・高校の学生の時期は、部活動等も積極的に行っていました。体力・ 生命力ともある程度順調に成長し充実していたものと思います。
21歳の時にまず、この主訴を感じでいます。この時期には、就職活動などで、 生き方に関して悩み、ストレスを感じることが多かったとのことです。ご本人が 性格でストレスを感じやすいとおしゃっていることからも、肝鬱状態になりやすい 素体であったのではないかと感じられます。

また、腎の根の弱さもあったのではないかと考えます。肝鬱状態の継続で ある程度腎への負担はあったものと思いますが、疲れやすいという症状以外に、 体力・精力の低下までの症状が発症することから、推測することができます。
この時点から、眠りの浅さ・夜間排尿・下痢が現在に至るまで継続していること からも、素からの腎気の不足と、肝鬱からの腎への負担がさらに、腎の弱さ (腎気の不足)を広げていったものと考えます。そして、下痢の症状を考えると、 腎気の不足と肝鬱は脾気の虚損へと影響していると考えることができます。







23歳の就職から、さらにストレスは強くなります。神経質に考える癖があり、 ストレスを抱えての疲労続きの生活は、精神・肉体への負担がかなりもので あったと感じることができます。主訴の発症からこの時期にかけては、まだ 成長段階にもあたります。本来であれば、腎気が盛んになり器としても大きく なるところが、逆に腎気を消耗させ続けています。これは、生命力としての 成長を妨げる要因であったものと感じます。

25歳に、自動車事故によるむちうちの症状を発症し、頭部~頚部~肩甲間部 への経筋病の修復のために、ここでも生命力の負担がありました。この時期 から、後天の精として気血の生成を行う為にさらに脾気への負担が大きく なってきたものと推測します。その後も肝気を張って休まず疲労を重ねて、 腎気を回復させるどころか消耗させ続けます。かなり自分を追い込んだ生活 だったのではないかと感じます。この時点で、自身の器の損傷を感じ、生活 習慣を変えることができていれば、今後の身体状況・生命力の悪化を防げた かもしれません。

30歳になると、ストレスはピークになり、なんとか奮い立たせていた肝気も、 限界を超えて発散できなくなり、意志・感情がコントロール出来なくなりました。
同時に、肝気犯脾も加わり脾気の虚損も激しくなり、体重の減少となります。
結果、心(神明)への気血の補充も出来なくなり、うつとういう状態に陥った ものと考えます。そして、精神のコントロールも出来なくなり、意欲の喪失・ 気持ちの落ち込み・動けない・不眠等の症状が出てきたものと考えます。
当然、肝脾心を支える為の、腎の負担もかなりの状態であり、ここで生命力が 妨げられていた状態がさらに大きくなり、腎の器がここで一回り小さくなった のではないかと考えます。

病院に通院し薬の服用で、なんとか意志・精神の状態を持ち上げて、仕事を 継続していました。退職を決意してからストレスが軽くなり、肝気の状態が安定 してきて、それに伴い腎気の消耗も少なくなったため、同時に脾気・心気 (神明)も最悪の状態を抜け出し、身体の改善に向かっていったものと思います。







31歳で鍼灸学校へ入学します。薬の服用も終了しますが、まだ抑うつ感は 残っています。腎気・脾気の虚損があり、気血不足の状態が継続して、心への 気血の補充がまだ充分でないことを伺うことができます。ただ、体重が短期間で 回復していることから、ある程度の生命力の回復があったものと感じることが できます。

この年の秋頃から胸の放散痛(左胸から下歯まで)が発症します。1年前 からは、呼吸困難の症状も出ています。上記での気血不足と腎の支えが弱く なっていることから、肺気・心気へと影響して、この症状が出ている可能性が あると考えます。この心気への影響は、胸の痛みとして、また回復していない 頚部~肩甲間部の経筋病の左肩甲骨内縁の痛みとして現れやすいものと 推測します。







現在は、主訴の精力・体力低下、疲れやすさは60~70%まで回復しています。
年齢的なことを考えると、ある程度この主訴を感じることはあると思います。
ただ、激しい運動の後ということでなくても、常時この主訴を感じやすいと いうことは、腎気・生命力の不足があり、肝鬱からの腎への負担、脾気の 虚損による気血不足が、継続していることを感じることができます。

腎気の不足は、疲労感が常時抜けないということと、夜間排尿が疲労時に多く なることから、伺うことができます。 同時に疲れやすさの継続は、気血不足を 感じることができます。

疲労時の眼精疲労は、腎気の不足と脾気の虚損からの精血不足が原因で あると思われます。継続している下痢の症状は、当初からの脾気の虚損と、 さらに腎気不固からの影響も加わっている可能性があると考えます。

また上記の腎気の不足から、よりストレス時に肝鬱になりやすい状態になって いるものと感じます。この肝鬱は、肝鬱気滞として鬱熱から胃熱を生じ食欲亢進 が出ていること、さらに心熱へと影響し、口内炎・小便黄・舌の芒刺の状態から、 外部からも推測することができます。そして経筋病で弱めてしまった、頚部~ 肩甲間部のこり・張りの症状として、疲労時に継続して現れているものと思い ます。(このこり・張りの症状は、経筋病が未だ回復せず、疲労時に生命力が 集まり気滞の症状として考えることもできます。)







30歳頃の最悪の状態ではありませんが、腎気の不足、肝鬱からの腎への 負担、そして脾気の虚損からの気血不足の悪循環が、主訴の状態を回復 しにくいものとしています。同時に、呼吸困難・胸の痛み・頚部~肩甲間部の こり・張りも上記の悪循環に関連した症状で継続している可能性がある状態 と考えます。今後は生活習慣を無理することなく、悪循環を断ち切り心身が充実 できれば、主訴はさらに改善に向かうでしょう。一方ではストレスへの対処方が 大きな課題であると思います。




弁証論治



弁証 腎虚、脾虚

論治 益気補腎、益気補脾







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