不育ヘパリン、水腎症、出産弁証論治


不育ヘパリン、水腎症、出産弁証論治
治療指針:生活提言:治療経過




治療指針



肝気の問題、脾気の問題と沢山の問題が生じているが、全身の気虚がきついため、なかなか妊娠せず妊娠したとしても継続ができなくなっている。妊娠がご希望でもあり弱りの中心でもある腎気をたてることを中心にし、全身を補気していくために肝気の調整、脾気の底上げもおこなっていく。




生活提言



人間は、生きる意思をもって進む生き物ですね。

前向きに、今日、そして明日を生きていこうという意志をささえるものは、 身体のベースとなる素体の力です。

もともと本来的にこの素体の力の弱さをはらんだお身体だと思います。 しかしながら、生きる意思は人並み以上に頼もしくお持ちであり、人生の華を咲かせて くれているのだと理解しています。ただ、支える素体の力の不足が、ときに オーバーペースな生きる意思を支えきれずになることもあるのではないかと 思います。また、妊娠ー出産という身体にとっての大きな負荷は、意思の力 だけではどうにもならない部分もあります。

妊娠を考えるときには、素体の力(腎気の力)を中心に、栄養をしっかり受け取る力(脾気の力)もつけ、ご自身の精神的な生きる意思の行き過ぎをちょっとだけセーブをかけながら、 上手に過ごして頂きたいと思います。

とくに、妊娠の中盤から出る腰痛は、ご自身の生命力である土台の力(腎気の問題)と直結する問題となってくると思います。

しっかりと乗り切り、無事なご出産をお祈りしています。




治療経過についての考察



8月の初診より週に1度で施術。便通がよくなり体調安定。
12月に妊娠。
妊娠5週目よりすぐにヘパリン開始、風邪を引く。
 強い気逆となり脱水、入院となる。
妊娠期間を通じ、結代脉、数脉がきつく、心臓への負担の大きさを思わせた。

妊娠15週よりおこった腰痛(腰背部痛)は、水腎症のためによるものと判明。
しかしながら、不育症治療のためヘパリン療法をおこなっているため、カテーテル治療を含む手術療法は対象にならないということで(出血傾向があるため手術が出来ない)、経過観察となる。

 かなり痛みが強く、水腎症を悪化させることも妊娠に影響が強いので、ここより積極的に、背部兪穴を使って腎気を高め、妊娠を乗り切るべく鍼灸を手厚くすることにする。週に最低二回、出来れば3回、また自宅での施術もご主人に指導し、積極的におこなう。 この水腎症による痛みは、治療の手厚さに比例して良好に経過でき、妊娠中問題とならなかった。

数脉は、治療の手を入れるものの、一回の治療の中でも変化は小さかった。脉自体がゆるんでも、数脉は不変という手応え。これはヘパリン療法の副作用ともいわれていたようだ。数脉に結代脉まで絡むような状況の時はご本人の辛さがより増している。治療後結代脉は取れることが多かったが数脉は不変のことがほとんど。

32週より下肢のむくみがきつくなる。腎臓のためと水を飲みすぎていることが判明。水分摂取を適度にすることで、むくみがかなり軽減

身体の調子、本人の辛さそのものは、妊娠32週頃より軽減している。これは腹部の突き上げが減り、上腹部に少し余裕ができたころからだ。しかしながら、督脉の不安定さはだんだん増しているような感じで、不安定感が強くなってきた。TH11からL3まで 間は詰まっていないが、全体にボコボコ不規則な状態がだんだんひどくなっていった。督脉の弱りは腎虚のあらわれそのものであり、弁証どうりの状況があらわれたものと考えられる。

陣痛促進剤をうつも、陣痛がつききれなかったのも、この督脉の弱り、腎気の弱りの影響であったかもしれない。よい判断で無事なご出産になったこと、なによりである。

(いつもこういった状態。陣痛に耐えられるのかと感じるような不安定さあり)




治療経過



09年8月初診
2診 便通が良くなった
  ここから、週に1度で施術、体調安定







09年12月 妊娠

妊娠5週よりヘパリン開始、風邪を引いた。
  左陽池、外関、下腹棒灸 足三里(灸頭鍼+ミニ灸)
  右脾兪、左胃兪、両三焦兪(温灸+ミニ灸)

妊娠8週 脱水のため入院

妊娠10,11週 きつい結代脉
  下腹棒灸 足三里(灸頭鍼+ミニ灸) 左外関、後谿、ミニ灸三陰交
  右脾兪、左三焦兪 両腎兪(温灸+ミニ灸)







妊娠14週 数脉がきつい、
  上腹部にきつい張り、おへそが便秘(していない)のときのように痛い
  右左外関ー臨泣 復溜(灸頭鍼+ミニ灸)
  左胆兪、左脾兪 両三焦兪(温灸+ミニ灸)

妊娠15週(四回施術)
  右の腎臓(腎兪上あたり)が痛い、水腎症のためと言われる。
  ヘパリンをしているので、カテーテル手術などが出来ないので
  経過観察といわれてしまう。 どうしても痛みが出れば手術も検討

  積極的に右の腰の痛み(水腎症のための痛み)を取るようにここから、
  週に2,3回の施術に切り替える。

  右左外関ー臨泣(+ミニ灸) 復溜(灸頭鍼+ミニ灸)
  右胃兪、右腎兪 両三焦兪、右大腸兪(温灸+ミニ灸)

 自宅では、復溜、臨泣のミニ灸をしてから、右の腎兪、大腸兪に棒灸とミニ灸を指示

妊娠15週、2回目、3回目
  左右外関ー左右臨泣 三陰交(灸頭鍼+ミニ灸)
  左胃兪、右腎兪 右三焦兪(温灸+ミニ灸)

妊娠15週 4回目
  今日は左から痛い
  外関、復溜、左湧泉
  胃兪、右の腎兪、三焦兪(温灸+ミニ灸)

妊娠16週
  TH11,12の骨間が空いている。鍼のあとはok。
  外関 左湧泉 復溜
  右脾兪、左右胃兪 左三焦兪 右腎兪 右大腸兪

妊娠18週
  腎臓はまだ腫れている
  前回の検診でタンパク+だったが、今回はokだった

  外関、左湧泉、左復溜
  左脾兪、右胃兪 両三焦兪 右腎兪、右気海兪







妊娠18週
  背中がゾクンとする感じで調子が悪い(翌朝よくなった)
  結代脉、数脉がひどい(ミダレダイコ)
  外関 左湧泉、左三陰交
  胃兪、腎兪 脊柱、懸樞 ジリョウ(温灸+ミニ灸)

妊娠19週
  身体がきつい
  TH11とTH12のところに段差が出ている
  右後谿、右霊道 足三里灸頭鍼+ミニ灸
  左右脾兪、三焦兪 TH11とTH12 右気海兪(温灸+ミニ灸)

妊娠20週
  右の尺位から関上にかけて明瞭に固い
  外関 左湧泉 足三里灸頭鍼+ミニ灸
  右胃兪 三焦兪、腎兪 気海兪(温灸+ミニ灸)

妊娠24週
  身体かなりきつい
  左外関 右後谿 復溜
  左脾兪、左胃兪、右三焦兪 腎兪(温灸+ミニ灸)

妊娠25週
  胃が痛い
  結代脉、数脉がひどい
  外関、左湧泉 三陰交
  脾兪 左胃兪 右腎兪 右大腸兪(温灸+ミニ灸)

妊娠26週 
  腰に少し痛みがある(水腎症の痛みと同じ)
  きつい数脉
  外関 足三里 右三陰交
  th12 脾兪、右胃兪、左三焦兪 右腎兪(温灸+ミニ灸)

妊娠26週
  息が苦しい 上腹部の張りがきつい(心下部のつまりきつい)
  外関 復溜、左湧泉 足三里灸頭鍼+ミニ灸
  胃兪 右三焦兪 右腎兪 左脾兪

妊娠27週
  三日前に灸に胎動が感じられなくなって病院にいった(大丈夫だった)
  心下部の詰まりとれている、息苦しさもだいぶよくなった。
  体重二キロ減った きつい数脉は変わらず
  復溜、後谿、足三里灸頭鍼+ミニ灸
  脊柱 左脾兪 左胃兪 三焦兪 右腎兪、右気海兪(温灸+ミニ灸)

妊娠29週
  とてもつらい、いても立ってもいられない感じ
  肝機能低下
  腰の痛みは大丈夫
  外関 右復溜
  左胆兪 脾兪 三焦兪 右腎兪(温灸+ミニ灸)







妊娠30週
  苦しいピーク越えた感じ 昨日あたりから楽
  外関、復溜 足三里灸頭鍼+ミニ灸
  左脾兪 左胃兪 右三焦兪 右大腸兪

妊娠31週
  足のむくみがひどい
  右後谿 右霊道 足三里
  脾兪 左胃兪 右三焦兪 右腎兪 大腸兪 中膂兪(温灸+ミニ灸)

妊娠32週
  だいぶ落ち着いている
  TH11からL3まで 間は詰まっていないが、全体にボコボコ不規則な状態
     (いつもこういった状態。陣痛に耐えられるのかと感じるような不安定さあり)

  復溜 外関 足三里灸頭鍼+ミニ灸
  胃兪、三焦兪 大腸兪(温灸+ミニ灸)

妊娠33週
  ピーク時の脉拍が140ぐらいだったのが、いまは120ぐらいで下がった
  復溜外関 足三里灸頭鍼+ミニ灸

妊娠34週
  頚管短縮のため安静

妊娠36週
  落ち着いている 二週間後に計画分娩の予定
  内関 復溜
  胃兪 左脾兪 右三焦兪 腎兪(温灸+ミニ灸)

妊娠39週
 帝王切開にて出産
  3000グラムオーバーの女の子 おめでとうございます(*^^*)
  無事に生まれてきてくれて、ありがとう!







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切診

五臓の弁別

病因病理:弁証論治

治療指針:生活提言











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