足が痛い弁証論治


足が痛い弁証論治
病因病理:弁証論治




この方は子どもの頃は他の子に比べると小食で、太るのが大変だったということから、もともと脾胃の器が小さいと言える。現在でも食べるのが遅いこと、食後にお腹が張ったり胸焼けすることが時々あること、大便が出きらない感じがすることが時々あることなどからも脾胃の器の小ささが伺える。腎を育てる脾胃の器が小さいということは、腎の器もそれほど大きくはならなかったと思われる。しかし、20代までは、就職など生活が大きく変わってもそれほど問題は見られなかった。これは、腎の器が小さいながらも、負担を受け止めうるほどに充実していたからと思われる。

ところが、クリーニングの配送で運転をしていたとき、31歳になると腰痛を感 じ始めた。疲れるくらいですごく痛いわけではないものの、仕事を変わり運転を しなくなっても腰痛は回復できずにいる。これは、運転という腰に負担になる姿 勢が腎気を損傷し、腎の器がその負担を受け止めきれなくなった可能性がある。 そして、損傷した腎気はいまだに回復できずにいる可能性がある。







32歳の時、現在の仕事を始めたばかりの頃は、それまでの仕事と比べて動き回 る量が多く、体重は減少している。また、1年間はご本人いわく、ストレスのせ いで2ヶ月に1回風邪をひいた。今年初めにたばこをやめて食欲が増し体重が増 えるまでは体重は安定していたこと、風邪をあまり引かなくなり引いても悪化し なくなったこと、問診表より精神的に無理をしている感じがないことなどから、 仕事になれてきた様子が伺える。

しかし、仕事を始めて主訴である足の痛みが徐々に出てきた。仕事は立ちっぱな しで歩き回るので、普通であれば、なれないうちはよく使う足の筋肉が腫脹し痛 みが出るが、次第に筋肉が負荷に耐えられるくらいに成長し痛みがなくなるはず である。ところが、痛みは徐々に出てきている。これは、環境に適応できる筋肉 にまだ成長しないうちに次の負荷がかかってしまっている、あるいは何らかの理 由で気滞がおき解消されずにいる、あるいは臓腑のバックアップが追いつけなく なっているという可能性が考えられる。

徐々に痛くなった足の痛みが、現在くらいの痛みになったのは2年前くらいから とのことなので、仕事を始めて1年くらいたってからである。きっかけは職場か らもらった革靴が合わなかったことのようだが、2ヶ月で靴にはなれても足の痛 みは変わらなかった。

ただし、革靴はなれたとはいっても負担がかかっていた可能性がある。これは翌年足の裏の指の付け根に夏の間痒みを感じたり(局所の熱)職場の一時的な移動の後、同じ場所の皮が剥けた(局所の気滞からさらに熱を生じた)のちに、たこのように硬くなった(局所の生命力の低下)ことから想像される。このため、足の筋肉の気滞が解消されづらくなった可能性がある。

30歳で以前は嫌いだった脂身の肉を食べ始め体重が増えた。この頃から脾胃に 負担がかかっている可能性がある。しかし、もともと小さい脾胃の器のため太っ たままでいることはできず、体重はまた徐々に減って行く。現在の仕事になって からも食事時間は不規則で脾胃に負担をかけている可能性がある。このため、消 化機能が落ち内湿が溜まりやすくなっていると思われる。







冬でも温かい飲み物を嫌うなど胃の陰虚傾向があり、胃熱が生じやすい。このた め、現在は食欲が旺盛であり、これは今年に入ってたばこをやめてからさらに顕 著となった。間食が増え、また体重が増え始め脾胃に負担をかけている状態であ る。

このため、気虚が進み、なお気滞を生じやすくなり、たばこをやめて体重が増えたあと、右足の股の付け根が歩いていてつる一歩手前の痛さを感じるようになった。これは、肝経であることから、肝鬱による気滞の影響と思われる。

昼は忙しいので感じないが、夕方になってダラダラすると痛いということから、 肝気を張っているときは気滞を感じず夕方腎気が落ちてくると意識するようにな る。夕方になると足全体がむくむということから、疲れて腎気が落ちた時に強い 気滞が生じ、水分の移動が損なわれる。内湿もあるためこの傾向は増強される。







腎の器が小さいため、変化に対する揺れ(足の疲労)を吸収できず、腎気が落ち 込んだとき肝気が伸びやかになれず気滞を生じやすくなると思われる。ただし、 一晩寝れば足の辛いのは治り、休みの日に一日歩き回っても痛くないということ から、腎気はまだそれほど損傷がひどくはないが、仕事の拘束時間が長いこと、 泊り込みが増え睡眠時間が少ない日が増えたことなどの過労の積み重ねや加齢に より、徐々にではあるが損傷の度合いが強くなっている様子が感じられる。これ は尿の色が悪いことが時々あること、翌日に疲れが時々残ること、関元、左大巨 や天枢、右腎兪や三焦兪などに反応が出ていることなどから伺える。

脾腎の器が小さいため敏感であり、また気虚気味となりやすいため、マッサージ をするとすぐほぐれる。強く揉んでしまうと後が辛くなってしまうことから、器 が脆いとも言える。







ところが、足に関しては最近揉んでもほぐれづらくなってきた。局所に関して熱 感はないので、刺激(足の筋肉の負荷、気滞)が過剰なため器が弱ってきて鈍感 になってきた可能性がある。

問診から1ヶ月経って確認したところ、それまでは感じなかった休みの日にも足 の痛みを感じ、疲れが取り切れていないようだということから、腎気の損傷が強 くなった感じが伺える。また、足以外の部分(背中など)もマッサージでほぐれ づらくなっていることから、器がさらに鈍感になりつつあるようだ。 2年前から感じ始めていた右肩凝り(気滞の蓄積)は右母指の腱鞘炎へと新たな 症状を起こすこととなった。

腎虚は胃の陰虚を起こしやすくなるが、このため食欲が増し脾胃に負担をかけ、 さらに腎の損傷という悪循環が起こっているため、まず腎をバックアップしなが ら胃の陰気を補い、胃の虚熱を押さえて食欲を落ちつかせるのを第一目標とする。 その後、脾腎をたて、最終的に腎の器を充実させる。これにより、気滞も起こり にくくなると思われる。







弁証:裏の虚、胃の陰虚

論治:補腎し胃の陰気を補う。その後裏をたて器を充実させる。







主訴:問診

時系列の問診

四診

五臓の弁別

病因病理:弁証論治











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