治療方針:生活指針


腹痛の弁証論治
病因病理:弁証論治




病因病理



患者さんは子供の頃から便秘がち(排便は3日から一週間に1回)であり、便秘をし ていてもそうつらくはなく気にならなかったということから、先天的に脾の器が小さ かったと考えられます。10代後半頃から続く、お腹が張ったりガスがたくさん出て しまうという症状からも脾気の弱さが感じられます。

先天的に脾の器が小さかったために、腎の器もそう大きくは育たなかった可能性もあ ります。

もともと低血圧だった(現在最高血圧は70mmHg)こと、脈や舌の状態などから慢性 的な気虚の状態が続いていることが分かります。とにかく朝が苦手で、睡眠不足の時 にはぼーっとして思考力、気力が低下するという患者さんのお話からも気虚の状態が 窺われます。

この慢性的な気虚は素体の器の小ささのために起きていると思われます。







主訴である「腹痛」が出始めたのは、37歳の冬からです。

37歳の4月に職場の法人が変わり、その前後1年くらいは仕事が非常に忙しく、同 時に精神的なストレスが高まり大変であったようです。特に法人が変わった後は仕事 に自信が持てなく、それまでは楽しかった仕事が楽しくなくなりました。

その大変だった仕事の状況に加えて、自宅の引越しや、ワークショップの企画開催と 本の執筆が重なり、この期間はかなり肝気を張り続け肝鬱の状態が続き、腎気を消耗 したのではないかと思われます。

このころ、職場や引っ越したばかりの自宅でびくびくしていることが多かったという ことも、腎虚の状態を現しているのかもしれません。

同じ年の11月には、仕事や人間関係のストレスがピークになり、朝まで眠れない日 がありました。

そして、足の付け根の上~足先までのもぞもぞした感じ(筋肉や血管がもぞもぞ動 く感じ)が強くなっています。これは外邪が体表に侵襲し、衛気と営気のバランスが 崩れた営衛不和の状態により起きた、あるいは肝陽が亢進することで局所的な内風を 起こしかけていた、という可能性も考えられます。







同時期に夜間排尿が増え、朝方に3、4回もトイレのために起きるようになっていま す。これは、子宮筋腫が膀胱を圧迫して起きているとも考えられますが、日中は頻尿 でないことから、ここで腎陽虚が一段階進んだのではないか思われます。

朝がつらいことや、秋から冬にかけて疲労感や倦怠感が増すこと、冬に全身の症状が 悪化していること等から陽気不足が窺われます。

そして次の年の1月、2月に、とうとう下痢や下血があり潰瘍性大腸炎との診断を受 けます。主訴である腹痛はこのころから起きています。痛みはきりきり、ちりちりし た痛みで、熱いやけど部分を擦るような痛みであります。肝鬱が長期化している中で 肝気犯脾の状態となり、さらに精神的なストレスをも加わり、内火を生じ発症に至っ たのではないかと思われます。

主訴と同時にでてきた症状には、頭痛、目の痛み、こぶらがえり、眠りに入りがた い、眠りが浅い、夢は疲れる内容が多いなど、強い肝鬱の状態を示すものが多くあ り、日常的な吐き気は肝気犯胃のため、口苦、口渇は肝火上炎のためと思われます。 こうした肝気の状況から考えると、患者さんの子宮筋腫は肝鬱が長引くことで、疏泄 機能が低下しお血が生じ起きた考えられます。

また慢性の便秘についても脾気の弱さに肝鬱が影響して起きていると思われます。長 引く肝鬱が津液を消耗して、便は兎糞状となっている可能性もあります。







時系列を眺めていくと、患者さんは慢性的な気虚の状態にありながらも肝気を張って 活動し続け、症状が悪化していることが分かります。身体の器以上に肝気を張って頑 張ることができる方なのでしょう。しかし身体は慢性的な気虚の状態ですから、その 弱さをカバーして活動するには、かなり肝気を奮い立たせることが必要になります。

こうした状況に、さらに強いストレスも加わって肝気が横逆し、肝木乗土となり脾胃 を損傷、腎気を消耗させているようです。脾腎が弱りますます気虚が強まることで、 さらに肝気が立ちやすくなる、またさらに強く肝気を奮い立たせなければ活動できな い、という悪循環になっているとも思えます。

患者さんのもともとの器がそう大きくはなかったという可能性を考えると、このよう に肝気を張って生活をすることは、日常的なものだったのかもしれません。このよう な状態が長年続きとうとう潰瘍性大腸炎を発症するに至ったと思われます。




病因病理



[弁証] 脾腎両虚 肝鬱

[論治] 補脾補腎 疏肝理気







主訴:問診

時系列の問診

切診

五臓の弁別

病因病理:弁証論治

治療方針:生活提言











一元流
しゃんてぃ治療院