治療指針:生活提言


ふわふわ感の弁証論治
病因病理:弁証論治




病因病理



子供の頃は偏食でかなり痩せていたことから考えると、脾虚のレベルが高く、腎器も充分に発育しなかったのではないかとも思えます。けれども結婚までは大病をすることもなく、元気にその生活を送ってこられておりますので、内側に弱さをはらんではいても、この時期まではいちおうバランスが取れていたと考えられます。







25歳で結婚し、26歳から不妊治療を始められました。ご本人には問題はなく、ご主人の問題だったにもかかわらずホルモン剤の投与を熱心に受け続けるということは、いたずらに肝気を高めて腎器を損傷させた可能性があります。

それまでバランスの取れていた生命力の、第一段階の損傷がこの時期となります。







幸にして姙娠することができます。けれども、不妊治療による生命力の損傷が大きかったこともあり、非常にひどい悪阻となります。この悪阻は、妊娠後期の八ヶ月までにおよび、姙娠時期であるにもかかわらず、姙娠前60kgあった体重が、この時期まで減少し続けることとなりました。

また、姙娠による母体の生命力の損傷はその神明(意識)にまで及び、失神を繰り返すような状態にまで至りました。

生命力の第二段階の損傷がこの時期となります。







出産直前には58kgまで体重は戻っていますが、産後2ヶ月~3ヶ月目には47kgまで減少しています。 けれども、生命力の損傷は胎児の発育障害を引き起こすには至りませんでしたが、臍帯を二重に巻いた状態での出産に至ったため、ひどい難産を引き起こすこととなりました。

三日ほど産院でがんばっていたわけですけれども、出血もひどく、病院に転院し、帝王切開寸前にまで至りました。出産時には、ふたたび神明が侵されて気を失っています。

赤ちゃんに異常がなかったことから考えると、異常に強い悪阻は、母体の生命力を損傷してまでも胎児を守るという意思の働いたものであるとも思えます。

しかし、これが三度目の生命力の損傷となりました。







産後、この生命力の損傷は、腎盂炎を繰り返すということにおいて現れています。いわゆる腎器の損傷が表面化して、発熱を通じて身体の安静を求めていたわけです。このため、医師の指示で、よく出ていた母乳も断乳するに至ることとなりました。これは医師の適切な判断であったと思います。

考えてみると、このような体調の中で胎児を育み母乳を出し続けるというこの身体の姿勢の中には、自らの生命力を犠牲にしてまでも子供を育てたいという、強い意思が感じられます。

さて、このようにこの患者さんの生命力の損傷は、充分な回復の時間を与えられないままに、何度も度重なって起こっています。このためこの時期の生命力、主として腎器の損傷は非常に重く深いものとなりました。







産後三年は出産による腎器の損傷が回復するには、一般的には充分な時間があったと考えられます。体重も55kgまで回復しています。

しかしこの時期、仕事を辞めたいというご主人の思いに答えるために、患者さんは新たな挑戦を始めることとなりました。

リフレクソロジーの学校に通学し、店に出る資格を取るために吐きながらがんばっています。また、店に出た後も、夜遅く、11時~12時頃までミーティングなどをしていました。

これは肝気を非常に張ることによって成し遂げられたことです。そしてそれはまた、基本的な生命力である腎器の支えに依存しています。

吐くということは胃気の上逆です。それを起こさしめるものは、肝気の上衝の激しさ(がんばってやりぬくぞという意志の力)です。この意志を支えているものはやはり腎器の力です。

いわば、出産当時の腎器の損傷からどれほど回復しているのか、この時期に試されていたという状況になっていました。古傷を再度傷つけて、その修復度合いを測っているような状態です。







実際に働いている時期、動いている時期には、やる気と一生懸命という肝気が生命力の損傷を覆い隠します。このため実際、大きな問題は起きませんでした。

しかし、仕事をやめて気が緩んだとき、その生命力の本来の状態が現れることとなりました。それが今に至るさまざまな不定愁訴となります。気が緩むことによって元気の仮面がはがれ、積み重ねてきた疲労のためにほんとうに疲れ切っていた身心状況が表面化したわけです。

朝、起き抜けの回転性の眩暈は腎虚に属します。

動悸は、心臓の正常な鼓動を支えるべき腎が虚しているために起きます。ふわふわ感は、重心の中心となるべき腎器が緩んで、生命がその中心を見失っているために起こっています。胸苦しさは腎虚によって生命力が上衝しているために起こります。

このような身体全体の弱さを引き締めようと生命力は必死になりますが、この部分を肝が支えています。肝気は往々にして過剰に動くため、他の生命力を圧することがあります。ことに肝気が高ぶるために胃の状態が抑圧されて、空腹感を感じなくなったり吐き気がしたりすることは、古来より多くの記載があります。

現在、この身心状況が一進一退なのは、少しでも腎器が立つとその上にたっている肝気が「もう大丈夫、もう元気いっぱい」ということでがんばりだし、回復しかけの生命力を再度損傷していることに求められます。

腎器の回復というものは、それほどまでに深いものであり、元気な状態が安定的に継続することによってしか得られないものなのです。




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